3・11伝承ロード推進機構/震災の教訓、自分事化へ/首都圏で初会合

2025年9月2日 行事 [2面]

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 3・11伝承ロード推進機構は8月30日、東京・有明にある東京臨海広域防災公園の学習施設「そなエリア東京」で「『震災伝承施設』深化の会」を開いた。東日本大震災の教訓を自分事と捉え、自然災害の被害を減らしてもらうのが狙い。いのちをつなぐ未来館(岩手県)など被災地の関係施設の取り組みを東北以外の人たちにも知ってもらおうと、初めての試みとして首都圏の防災拠点で会合を開いた。4施設の担当者が取り組みを報告し、今後について識者と意見交換した。
 いのちをつなぐ未来館、東日本大震災津波伝承館(岩手県)、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(宮城県)、いわき震災伝承みらい館(福島県)の担当者が参加。佐藤翔輔東北大学災害科学国際研究所准教授の進行で活動内容を報告し、菅原智広全国地方新聞社連合会副会長(岩手日報社取締役)、引地美香JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門観光・地域活性化ユニットマネージャーと意見交換した。国土交通省東北地方整備局と、岩手、宮城、福島の3県との共催で、国土技術研究センターが後援した。約100人が会場で聴講し、約90人がウェブで視聴した。
 冒頭、同機構の今村文彦代表理事は自然災害の教訓を伝える施設や活動を国が認定する「NIPPON防災資産」の取り組みを紹介しつつ、全国の施設では継続した活動や情報発信の課題があることを指摘した。その上で「全国、海外の皆さんとも共有できる。代表的な施設の活動や期待を知っていただく。あの震災の経験、教訓をバージョンアップして伝えたい」と話した。
 内閣府の横山征成政策統括官(防災担当)は行政の公助、地域の共助、国民の自助を巡る取り組みの重要性を強調し、「知見の共有、意見交換は大変有意義。防災の取り組みが強化されるのを願う」とあいさつ。国交省の西澤賢太郎水管理・国土保全局河川計画課長は「防災資産の価値を高めるヒント、災害リスクを自分事にするヒントを探りたい」と述べた。
 4施設のうち、いのちをつなぐ未来館は、2024年度に過去最多となる299件のプログラムを提供した。無料と有料のコンテンツを用意し、有料の体験者が無料を上回っている。「楽しく学ぶ、体験型の防災学習」がテーマ。近くの釜石鵜住居復興スタジアムを訪れ、スポーツと防災をセットで学ぶプログラムや、水門防潮堤の見学、避難に使われたルートを歩くプログラムなどを提供している。
 企業が研修としてプログラムを利用している状況なども説明した。震災当時に中学生だった担当者がプログラムを企画する際のポイントなどを話した=写真。佐藤准教授らとは、就学旅行での利用や首都圏からの利用などで質疑に応じた。