◇歴史的・文化的資源とインフラで地域活性化 JAPICは、北陸新幹線の敦賀延伸を背景に、福井県嶺南地域や北陸・近畿北部に広がる「畿北ブロック」を対象とした地域活性化プロジェクトを提言した。かつて京都と結びつき、サバ街道や北山杉などの歴史的・文化的資源を有していた地域だが、近年は人口減少や交通網の不十分さにより、地域間交流や経済活動が停滞していた。JAPICはこれらの課題を克服し、交流人口の増加や地域産業の再生を目指す。 プロジェクトの基本方針は、地域資源を軸にした「拠点連結型県土構造」の形成にある。具体的には、敦賀駅周辺の新幹線アクセス拠点を中心に、歴史資源や観光施設、産業施設を結ぶ回遊性の高いルート整備を進める。サバ街道沿いのサイクリングロード整備や、北山杉をはじめとした林業資源の利活用、港湾施設の振興など、地域資源と産業を結び付けた施策が計画されている。これにより、観光や産業の双方で経済波及効果を期待する。 嶺南地域では、物流や文化交流を再構築することも課題だ。須野原豊ワーキンググループ(WG)長は「交通網の不十分さを補い、地域の持つ潜在力を最大限に生かすことが重要」と説明。新幹線敦賀延伸は、都市間アクセスの改善だけでなく、地域間の回遊性向上や定住促進の契機として位置付けられる。道路や公共交通の整備、サイクリング・歩行ネットワークの構築は、観光振興と生活利便性向上の両立を図る。敦賀から高浜に至る「わかさいくる」の魅力向上に向けた関連施設整備を進める。 地域内の産業活性化もプロジェクトの重要な柱だ。林業、水産業の地域資源を活用した新しい事業モデルの創出、地域特産品のブランド化など経済の多角化を進める。行政と民間、地域住民が連携し、地域資源を戦略的に活用することで、単なる観光振興にとどまらない持続可能な地域経済の構築を目指す。 今後は、インフラ整備や施設開発の具体化、自治体間や産業界との連携強化が課題となる。プロジェクトは段階的に実施される予定で、モデルケースとして全国への展開も視野に入れる。須野原WG長は「地域の歴史的・文化的資源とインフラを結び付けることが、地域活性化の鍵になる」と指摘する。 北陸新幹線敦賀延伸を契機に、嶺南地域を含む北陸・近畿北部の「畿北ブロック」は、歴史資源の活用、交通ネットワークの強化、産業再生を通じて、新たな地域の価値創造に挑むことになる。交流人口や定住人口の増加、地域産業の活性化という成果が期待され、地域全体の持続的発展への布石となることが注目される。