◇防災・減災に終わりない
オランダ人技師の指導で利根川水系の本格的な河川改修が始まってから、今年で150年を迎えた。沿川では幾度も大規模水害が発生。戦後最大級の被害をもたらしたカスリーン台風を踏まえ、同様の被害を出さないために堤防やダムの整備を行ってきた。2019年秋に襲来した台風などを境に、流域全体での治水対策も進展している。節目の年を迎え、関東地方整備局は国民が水防災を「自分事」として意識するための啓発活動を強化している。
近代的な改修事業は1875年、利根川水系の江戸川で始動した。1900年の利根川改修計画策定後、第1期改修工事が着手され、頻発する洪水に備えて堤防整備などが進められた。
47年9月、東海地方以北を襲ったカスリーン台風などの洪水を受け、国は新河川法を制定。これを受け、「利根川水系工事実施基本計画」を策定した。堤防やダムの整備方針を定め、利根川水系では13ダムの建設を推進。直近では八ツ場ダム(群馬県長野原町)が完成している。
15年9月の関東・東北豪雨は、ハード対策だけでなくソフト面の取り組みも重要だと再認識させた。この豪雨で茨城県常総市の鬼怒川堤防が決壊し、国は「水防災意識社会再構築ビジョン」を策定。「施設で防ぎきれない大洪水は必ず発生する」との前提に立ち、同年には鬼怒川で緊急対策プロジェクトが始動した。
土砂災害時の体制強化や防災意識向上を目的とする法定協議会の設置など取り組み内容は多岐にわたる。併せて、住民が自らの避難行動を事前に決める「マイ・タイムライン」の作成も進められた。
19年10月の台風など気候変動の影響で雨の降り方が変化しているため、国は河川整備基本方針の見直しを行っている。
気候変動で生じた整備計画と現状との乖離(かいり)を埋める取り組みが、「流域治水への転換につながった」(関東整備局河川部河川計画課)。現在、利根川の上下流や中川、綾瀬川を含め全国で流域治水プロジェクトが進行し、まちづくりと一体となった調節池や田んぼダムの整備が展開されている。
関東整備局は今後、河川整備基本方針や河川整備計画の見直しを順次進める方針。併せて利根川改修150年を機に関連イベントを開催し、水災害に関する普及啓発をより充実する考えだ。
過去の教訓を胸に、流域自治体、企業、そして住民一人一人が水害を「自分事」として捉え、行動に移していく--。防災・減災への歩みは、これからも続いていく。









