「記録的猛暑の影響で作業効率が著しく低下しており、夏季の現場実態に見合った歩掛かりの見直しを検討すべきだ」。全国建設業協会(全建)ブロック会議で傘下の地域建設業協会は異口同音に口をそろえる。気候変動による猛暑での現場作業は現場の安全も脅かす。現場従事者の安全を守りながら施工を続けるための環境整備が急がれる。国土交通省側は「地域実情を踏まえた柔軟な対応を検討する」と応じるなど前向きな姿勢を示した。 6月から、熱中症対策に関する改正労働安全衛生規則が施行され「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられた。現場では、安全確保と施工管理の両立に向け、休憩場所の整備や健康管理、作業短縮が義務付けられたが、工期や経費の見直しが追い付いておらず、現場管理費や共通仮設費の現場環境改善費の補正だけではとうてい賄えない状況がある。長崎県建設業協会や宮崎県建設業協会は「作業実態に応じた作業量の改定や亜熱帯補正を準用した夏場限定の歩掛かり見直し」を要望し、適正な利益を確保できるよう主張した。 気候条件の厳しさを踏まえ、猛暑日に加え「積雪日など、地域特性を考慮した工期設定と経費補正が必要だ」との声も上がった。特に北陸地域では、夏の酷暑に加えて冬季の降雪による施工制限があり、完全週休2日制を一律に導入することは現実的でないとも指摘。岐阜県建設業協会も「豪雪地域では現場内の作業前除雪で1時間、終了前の降雪対策や後片付けなどで1時間必要となり実作業で5・5時間しかできない」と具体的な数字を示し、冬季の歩掛かり補正検討など地域の実情に応じた柔軟な働き方と、適正な工期設定を求めた。福井県建設業協会は「安全対策を徹底するには発注者の理解と協力が不可欠である」と訴えた。熱中症対策費用の反映として長野県建設業協会は猛暑下での施工環境改善を訴え、工期延長や現場管理費補正の強化を要望した。 各建協の要望に対し国交省は「熱中症対策にかかる費用を現場管理費や共通仮設費に計上できるよう制度整備を進める」と回答。空調ファン付き作業服やミストファンの導入費用、経口補水液の購入費なども算入対象とし、現場環境の改善に向けた支援を拡充している。ただ、地方自治体発注工事では対応が分かれており、制度の周知徹底と運用統一が課題に残る。現場に合った歩掛かりと適正な利益の確保で働きやすい環境となるだろう。










