全建ブロック会議を振り返る・上/根強い3Kイメージ、人材確保に苦戦

2025年11月5日 行政・団体 [1面]

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 全国建設業協会(全建、今井雅則会長)と都道府県建設業協会、国土交通省らによる2025年度地域懇談会・ブロック会議が、10月31日の北海道地区で全日程を終えた。各協会からは地域建設業が果たす役割を最大限発揮するため公共事業費の予算や事業量の確保を求める声が相次いだ。自然災害が激甚化する中、防災・減災の必要性も高まっている。ただ、資機材価格の上昇や人手不足、労務費の適正化など解決すべき課題が山積している。建設業の魅力向上に向けた意見交換が活発に行われた。(編集部・野中駿太)
 各会合では、建設業界共通の課題として「担い手不足」が繰り返し指摘された。処遇改善と魅力発信を両輪に据えた方策に工夫を凝らすも、山口県建設業協会は「依然として3K(きつい・汚い・危険)の意識が根強く建設業の重要性への理解が薄い」と厳しい現状を吐露する。福島県建設業協会は「IT活用や働き方改革などで4K(給料、休暇、希望、かっこいい)産業への転換が進む現状を説明する必要がある」と訴えた。
 各建協で独自の取り組みも進む。熊本県建設業協会では、25年度から災害情報共有システムを活用した「災害に関する情報共有に係る協定」を報道機関と締結した。協定を通じ災害発生時、地域に貢献する「かっこいい建設業」として県民に向け発信している。ただ、「効果的な広報をするには業界の力だけでは困難」と指摘。災害時の活躍の様子を国交省主体で報道機関と連携し広報を推進するよう要望した。
 人材不足に対して国交省では、i-Construction2・0による自動化、省人化を進め、40年度まで省人化3割、生産性向上1・5倍という長期目標を掲げていることを説明した。生産性向上のためのICT技術者の育成も必要となる。山梨県建設業協会は「新技術を習得させ専門技術者として育成するには時間面、費用面を含めて課題が多い」として、ICT技術者の雇用確保と育成に必要な制度の創設や諸経費の増額などサポート体制の整備を求めた。
 地域建設業の安定経営なくして防災・復興は維持できない。和歌山県建設業協会は「地域の守り手の役割を果たすため、若手育成と働き方改革が必要」と訴え、頻発する豪雨災害や能登半島地震への対応を踏まえ、経営基盤の強化と公共事業予算の確保が不可欠と強調した。安定した事業量の確保を前提に若手人材の育成・働き方改革を国交省主体で積極的に取り組むよう求めた。
 国交省側は「働き方改革の実現には適正な賃金水準と安定した発注が不可欠」とし、週休2日や熱中症対策の支援と並行して、若者に選ばれる「魅力ある産業」への転換を目指す方針を強調した。官民一体の取り組みで処遇改善と働き方改革の好循環を生み出せるかが、建設業の未来を左右する。