国交省/標準労務費運用ルール整理/当事者視点で「使うこなす」

2025年11月19日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は「労務費に関する基準(標準労務費)」を踏まえた建設工事契約の価格交渉のガイドラインとなる「運用方針」の案をまとめた。個別に異なる契約実務の現場で標準労務費をいかに「使いこなすか」にフォーカスし、さまざまな場面に置かれた受注者や注文者など当事者の視点で71項目の具体的な対応を整理した。運用方針に基づく対応を浸透させ、まずは労務費・賃金を「払うためにもらう」という行動変容と商習慣の定着につなげる。=2面に関連記事
 個々の工事で前提条件や見積もり方法が異なることを踏まえた見積もり・契約の統一的なルールを提示する。建設業者ではない個人施主や民間発注者の視点、重層的な下請を抱える元請の視点も取り上げ、それぞれの悩みどころを細かに拾って解説する。労務費や必要経費を内訳明示した見積書の作成手順を解説する「書き方ガイド」や「様式例」を専門工事業者向けに用意する。案の意見募集を経て12月上旬に公表する。
 標準労務費はあくまで「標準」の施工条件などを前提とし、個別契約では施工条件の良しあしや個社の能力を踏まえ労務費を計算する必要があるとする。技能者賃金を担保する観点から、公共工事設計労務単価を下回る水準の単価設定は「不適正」と判断。通常よりかさむ手間や生産性向上の努力を踏まえ、歩掛かり部分を補正した見積もりを許容する。契約後、労務費の実費精算は必要としないという基本の考え方も示す。
 受注者の視点では、適切な設計労務単価を選定し見積もりに反映させる方法や、技能者によって建設キャリアアップシステム(CCUS)レベルに偏りがある場合の対応を解説する。見積書では労務費を構成する労務単価と歩掛かりの内訳まで開示し、賃金原資の確保と歩掛かりの適切さを「建設業行政などに明らかにすることが望ましい」とする。下請から事前に見積もりを取らず注文者に見積書を提出するケース、閑散期に値引きするケースなどの法令上の考え方も整理した。
 受注者側から必要な労務費や必要経費を確保する商習慣を定着させるため、元請には1次下請を通じ2次下請以降も労務費の内訳明示を働き掛けることを期待する。設計・施工一括(DB)発注などを念頭に、設計精度が不十分な状態の積算で労務費を内訳明示する必要はなく、契約締結の前提となる詳細設計が確定した段階以降の見積もりで対応するのが妥当とする。