国交省/コミットメントや契約変更協議/標準約款に規定、活用へ

2025年12月3日 行政・団体 [2面]

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 国土交通省は、改正建設業法の全面施行を踏まえた建設工事標準請負契約約款(標準約款)の改定内容を提示した。「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の一つとして、契約当事者間で労務費・賃金の支払いに関する約束や情報開示を行う「コミットメント」条項を新設する。改正業法で契約変更協議の円滑化ルールを規定したことを踏まえ、契約変更の請求・申し出や誠実協議に関する規定を追加。契約変更で物価変動の内容を考慮し、適切な価格転嫁を図る必要があることも明確化する。 =1面参照
 2日に開かれた中央建設業審議会(中建審)総会で説明した。標準約款は公共工事と民間工事、下請契約のそれぞれに合わせた「契約書のひな型」として中建審が作成し実施を勧告する。新設するコミットメント条項と契約変更協議の追加規定は、標準約款の全様式で記載し、すべての契約当事者に適切な対応を求める。
 コミットメントは任意で利用できる選択条項とし、適正な賃金・労務費を直用の技能者や直接の下請に支払うことを受注者が注文者に約束する。さらに注文者は適正な支払いに関する情報開示を受注者に請求できる。情報開示は賃金支払いの誓約書や下請契約書の写しの提出で対応する。
 契約当事者間で可能な範囲からコミットメントを導入してもらうため、約束する内容のレベルに合わせて条文を「A」と「B」の二つに分けた。「A」は重層的な下請構造の中でも労務費の行き渡りを確保するため、受注者の下請にもコミットメントを導入することを約束する。下請契約の各段階に連鎖する形でコミットメントが導入され、重層構造全体で行き渡りが担保される仕組みとなる。あくまで「A」を基本としつつ、個々の契約段階で個別にコミットメントを導入する「B」を用意し、どちらかの活用を推奨する。
 契約変更協議の規定は改正業法の2024年12月施行分で請負代金などの「変更方法」を契約書の法定記載事項と明確化したことなどを踏まえ追加する。契約変更を請求できるケースとして資材の価格高騰や主要な資材の供給減少などを明記。注文者や受注者は、それぞれの相手に契約変更の協議を求めることができ、申し出を受けた場合は誠実に応じるよう努めるよう規定する。条文の読み方によっては物価下落局面などにも適用できる規定となっている。
 これ以外に公共約款の一部規定も見直す。国と県など発注機関が異なる工事間で調整が必要な場合、発注者が主導して他機関と調整に当たる規定を設ける。請負代金の変更で受発注者間の協議が整わないケースもあることを踏まえ、それを理由に発注者として不利益が扱いはしないことや、そもそもの協議で受注者の意見を考慮することを明確化する。