東日本大震災で千葉、茨城の両県は広範囲で液状化が発生した。行政が関与できる場所は対策が取られ、技術進展もあったが、民地での対応は思うように進んでいない。費用負担や住民合意が大きなハードルとなっている。地盤工学を専門とする国士舘大学理工学部理工学科まちづくり学系特任教授の橋本隆雄氏は「このままでは大規模地震の発生時に、同じ地域で再び液状化が起きる」と警鐘を鳴らす。
震災の液状化被害は、千葉県で1万8674件(2011年9月時点)確認され、全国最多となった。浦安市や千葉市美浜区など東京湾岸の埋め立て地に集中した。茨城県では利根川下流域の潮来市や神栖市、鹿嶋市を中心に発生。件数は6751件(同)に上った。
震災後は各自治体が市街地液状化対策事業などを進めた。技術発展もある。液状化対策の手法の一つである地下水位低下工法は、地下水を排水して水位を下げる。従来は道路を掘削する開削型が主流だったが、都市部ではガス管などの既設インフラへの影響が大きい。そこで地中を横方向に掘り進める推進型が開発され、千葉市で初めて採用。改良を重ねて熊本地震などの被災地でも活用された。
行政が主体となる公共空間での対策は前進している一方で、民地の対策が課題として残る。大きな壁となっているのが費用負担と住民合意だ。
震災後、浦安市では地盤改良策として宅地の境界に沿って地中に壁を設ける格子状地中壁工法が検討された。地区単位で実施することで大きな効果が期待できるため、対象地区の住民合意が前提となる。橋本氏によると「当時の費用は1戸当たり約800万円、住民の自己負担は約200万円」。被災した住民にとって、生活再建に追われる中で新たな費用負担を受け入れるのは難しく、合意がまとまらなかったという。
こうした現状を踏まえ、橋本氏は「住宅の新築や建て替えの際、地盤の評価と改良をセットで行う仕組みをつくり、定着させるべきだ」と指摘する。「建築サイドが地盤に関する理解を深め、建築段階で住民に液状化の可能性を説明することが重要だ」という。「有無を言わせず地盤改良を進めるくらいの発想があってもいい」とも語る。行政の関わり方も問われる。「これから開発する土地は液状化リスクを踏まえた造成を徹底しなければならない」。補償に関しても限界を明確に示すことが求められる。
橋本氏は「一度液状化した土地は再び液状化する可能性が高い。建物の耐震化が進んでも、地盤が弱ければ住宅は沈む」と危険性を訴える。傾いた家を戻すだけでも1000万円以上かかる場合があり、さらに地盤対策費も加わる。「災害後に直すより、あらかじめ100万、200万円かけて準備する方が合理的ではないか」と話す。
震災から15年。民地の液状化対策はまだ途上にある。「震災直後には関心が高まっても、年月がたつにつれて危機感は薄れていく」(橋本氏)。次の地震にどう備えるかが問われている。







