竹中工務店と物質・材料研究機構(NIMS、宝野和博理事長)は、長周期地震動の対応技術として「H形断面ブレース型」の制振ダンパーを開発した。疲労特性と座屈耐性に優れた「FMS合金」を採用。H形断面の芯材を補剛鋼管で覆ったシンプルな構成を実現した。適切な溶接条件の範囲も確立し、一般的な鉄骨工場で製作できる。一般的な鋼材ダンパーに比べ約7~10倍の疲労寿命を確保した。
FMS合金は、鉄を主成分に高濃度のマンガンやケイ素などを添加している。形状記憶、優れた耐疲労性などの特徴がある。両者はこれまでFMS合金の特性を生かしたブレース型制振ダンパーの開発を継続実施。2022年に指定建築材料として国土交通大臣認定を取得した。
開発したH形断面ブレース型は、製作の効率化と汎用(はんよう)性の向上を実現している。疲労耐久性を考慮した専用溶接材料でH形断面に溶接した芯材は、変形時にひずみを分散。ひずみの集中による疲労き裂の進展を抑制し、シンプルな座屈補剛の構成でも優れた疲労寿命を発揮する。
竹中工務店は、新タイプの芯材と補剛鋼管の最適な設計で構造性能を評価した。NIMSはFMS合金専用の溶接材料による適切な条件範囲を設定した。
新タイプの制振ダンパーは、東京都中央区で施工中の長瀬産業東京本社ビル(S・RC・SRC造地下2階地上14階建て延べ2万6218平方メートル)に初適用した。執務空間を阻害しないコンパクトなスペースで制振効果が最大限発揮できるよう、18基設置している。
別の物件に適用することも決まっている。引き続き年1~2件程度の継続適用を目指す。将来の外販も視野に入れている。







