東北のキーパーソン/東北経済連合会・増子次郎会長/持続可能で魅力ある東北へ

2025年12月4日 人事・動静 [6面]

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 人口減少と少子高齢化が急速に進む東北地方では、働き手や地域の担い手の確保が最重要課題となっている。若年層を中心とした首都圏への流出も続き、地域の生活基盤を支える建設業をはじめ、多くの企業が厳しい局面と対峙(たいじ)ている。東北の主要分野をけん引する人物に聞くシリーズ「東北のキーパーソン」。初回は東北経済連合会(東経連)の増子次郎会長に、現状認識と今後の展望を聞いた。
 --人口減少が進む東北の現状は。
 「東北・新潟の生産年齢人口は過去25年で約200万人(約25%)減少し、総人口は今後25年でさらに約310万人(約30%)減少すると推計されている。若者や女性の首都圏流出に歯止めがかからず、消費人口の減少による経済縮小が強く懸念される。イノベーションの創出と、雇用・生活環境の魅力向上を同時に進める必要がある。東経連として、今年7月には政府の科学技術・イノベーション基本計画に対する提言をまとめ、政府などへの要望を行っている」
 --東北の強みをどう評価するか。
 「日本海側は良好な風況を生かした洋上風力発電の適地が広がり、地熱やバイオマスなど再生可能エネルギーの潜在力も大きい。東北が全国のGXに貢献できる可能性がある。太平洋側には世界最先端の科学技術プロジェクトが多く、仙台市で昨年運用を開始した次世代放射光施設『ナノテラス』では企業利用の成果も出始めている。中堅・中小企業の活用を後押しし、イノベーション創出を促進する」
 --食や観光資源の発信は。
 「豊かな自然や世界を魅了する農水産物など、東北・新潟には世界に誇れる強みが数多く存在する。インバウンド需要は全国で伸びているが、東北は依然としてその数%にとどまる。外国クルーズ船の誘致や観光資源の開発、港湾整備に力を入れ、需要を取り込む必要がある。また、大阪・関西万博で東北絆まつりが開催されたが、まだまだ西日本の人々には東北のことが知られていないと感じた。国内に向けても官民連携で発信を強化する必要がある」
 --道路や港湾、空港などインフラの役割をどう考える。
 「観光や輸出を支えるインフラ整備は極めて重要である。高規格道路は日常生活だけでなく、災害対応や医療面でも大きな効果を発揮する。東経連は、『四つの南北縦貫軸と七つの東西横断軸』による格子状骨格道路ネットワークなどの実現に向け、政府への予算要望を継続している」
 --建設業を含む地域企業が抱える課題への対応は。
 「多くの業種で人材不足が深刻だ。若者や女性の首都圏流出は一朝一夕に解決できず、首都圏の人材が都市と地方の二拠点で活躍する“デュアルライフ”など新しい働き方の普及が必要だろう。人材不足や生産性向上にはデジタル化やDXの導入も有効だ。東経連ビジネスセンターではDX支援に取り組み、セミナーや専門家派遣を実施している。東北経済産業局や東北地方整備局と連携した『東北地域デジタル化推進関係省庁等連絡会』を設け、補助金活用セミナーも展開している」
 --魅力ある職場づくりの考え方は。
 「東経連と東北活性化研究センターは、首都圏で働く女性を対象に、地方で働くための条件を調査、分析している。魅力ある職場環境づくりには経営者の理解が不可欠であり、自治体や国と連携して企業支援の拡充を求めている。賃上げをコストではなく人への投資と捉える姿勢が重要になる。研修やキャリアアップの機会を整え、将来の成長を描ける環境をつくるべきだ。教育に力を入れる中小企業を、国や自治体が確実に支援する制度も必要になる」。