JR東日本/執行役員建設工事部長・井料青海氏に聞く/羽田空港アクセス線に注力

2025年10月28日 人事・動静 [2面]

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 東京都心部と羽田空港を結ぶ新路線の整備や、渋谷、東京など主要駅で改良工事が進む。6月に就任した井料青海執行役員建設工事部長は「駅が使いやすくなることで東京全体の魅力向上につながる」と語る。国鉄時代から培われた技術とノウハウを継承する技術者集団を率い、顧客の利便性向上に挑む。
 --建設工事部の特徴は。
 「国鉄時代の『工事局』を源流とする長い歴史を持つ。JR東日本への移行時にアウトソーシングも検討されたが、技術力を内部に残す方針を選んだ。現在、約2000人の技術者が在籍し、長年の経験と知見をプロジェクトに生かしている。専門部署として一定の規模を維持できている点が、組織の大きな強みだ」
 --注力している事業を。
 「羽田空港アクセス線の整備に最も力を入れている。現在は東山手ルートを施工中で、羽田空港と東京駅を直結し、さらに上野東京ラインへの接続も視野に入れている。将来的にはりんかい線に直通し、新木場までの運行を可能にする計画もある。物理的には京葉線への乗り入れも可能だ」
 --アクセス線の施工エリアでは文化財の出土も懸念される。
 「田町駅付近から地下トンネル区間に入るが、その周辺は日本初の鉄道が新橋~横浜間で開通した区間に当たる。地元の教育委員会とも連携し、調査を進めながら慎重に工事を進行している。ルート上に遺構が確認されれば、丁寧に記録保存を進めていく方針だ」
 --渋谷駅の大規模工事は。
 「山手線ホームを島式に変更し、埼京線ホームは山手線の近くに移設するなど、線路切り替え工事を終えた。現在は仮設状態の施設を本設化する夜間工事を行っている。歩行者ルートが頻繁に変わる状況だが、利用者の混乱を最小限に抑えるよう努めている」
 --今後の改良計画は。
 「池袋や上野など、手つかずとなっている主要駅もいずれ改良が必要になる。地元からもリニューアルを求める声が上がっている。大宮もまちづくり計画に合わせた駅改良が課題で、われわれとしても重要なテーマと捉えている」
 --建設業界の人手不足にどう対応している。
 「業界全体で解決すべき構造的な課題だ。1社だけで取り組める問題ではないが、できる限り人手を減らせる設計を心がけている。部材の工場製作など、現場作業を減らす工夫も進めている。ただし、現場の無人化は難しい。一歩ずつ改善を重ねていくしかない」
 --2026年7月に予定する組織再編の狙いは。
 「建設工事部は『建設エンジニアリング部』として再編し、戦略と計画の立案に特化した組織となる。池袋や大宮のように、既に検討段階にあるリニューアル案件をどのように実現させるかを考える。今後は計画中の駅だけでなく、利用者や地域、そして会社にとって何が最も価値をもたらすかを総合的に検討する部門を目指していく」。
 (いりょう・おおみ)1993年東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻修了、JR東日本入社。2020年建設工事部担当部長、22年執行役員秋田支社長などを経て6月から現職。趣味はドライブとまち歩き。東京都出身、58歳。