回転窓/便利さの皮肉--魔法の杖は自分の手に

2025年12月9日 論説・コラム [1面]

文字サイズ

 師走の街角で、「マウスの日」と聞いてパソコンを思い浮かべる人は、どれくらいいるだろう。12月9日は、便利な道具に囲まれて暮らしていることを、あえて思い出す日でもある。まるで、魔法のつえを手にしながら「魔法って本当にあるの?」と首をかしげる子どものように▼パソコンなしでは、仕事も遊びも情報のやりとりも成り立たない。指先ひとつで世界とつながれる便利さはまさに魔法だ。だが、便利さに慣れ過ぎると、考えることや覚えることまで丸投げしてしまう危険がある。その姿は、つえを振るばかりで自分の足で歩くのを忘れた魔法使いのようだ▼検索に頼り、記憶はクラウド任せ。指先で交わす言葉は、ぬくもりを失いがちだ。知らぬ間に便利さが人間の感覚を薄く包み、無意識のうちに判断力や想像力までむしばむ▼パソコンは今や不可欠な道具だ。だが、便利さに頼り過ぎて、道具に使われていることに気づかない人は案外多い▼年の瀬、少しだけ画面から目を離してみるのも悪くない。便利さはありがたい。けれどもほどほどが大事。魔法のつえを振るのは、自分自身であることを、どうか忘れずに。

同一ジャンルの最新記事


2025年12月10日 [1面]

2025年12月8日 [1面]