創業106年の歴史を受け継ぎつつ、国内で培った工場・ビル設備の実績とシンガポールを中心とした東南アジアでの経験を生かし、さらなる成長を図る。創業以来重視してきた「人間尊重」「誠実と信用」「技術研さん」を基軸に置きつつ、利益の確保を通じた堅実経営と社員教育への投資に、これからも力を注ぎ続ける。
--就任の抱負を。
「創業者と歴代経営者が築いた百年企業の重みは大きい。重責を真摯(しんし)に受け止め、社員と共に成長の道筋を描き、着実に実行していく。企業として、当然利益も追求し続ける。連結売上高はここ数年1000億円前後で推移している。2025年9月期は営業利益が過去最高の水準になった。収益力を保ちつつ、社員の給与水準も業界トップクラス維持に満足せず、さらに高みを目指したい」
--受注戦略をどう描く。
「首都圏と関西圏はビルと工場を中心に活況が続いている。データセンター(DC)の需要も旺盛だ。長年支えてきた工場設備は当社の強みで、鉄鋼や化学、半導体関連など企業の期待も大きい。設備工事から自動制御・ソフト領域まで設計と施工を一括提供するソリューション事業部は差別化の要だ。今後も伸ばす。海外事業は拠点を置くシンガポールなどで利益率を高められるよう、マネジメントとリスク管理で着実に収益を積み上げる」
--人材育成と担い手確保は成長を支える重要課題だ。
「『人材育成ファースト』を掲げ、教育には惜しまず投資する。採用は毎年30人規模を維持している。定着率向上へ教育・研修の質を高め、成長を実感できる環境づくりに力を注ぐ。入社後3年間の研修制度も成果が出つつある。研修所教育とジョブローテーションを通じ、知識と人脈を築いてもらう。認知度向上のPRも重要だ。パートナー企業の採用支援や世代交代にも寄り添い、共に成長する企業グループを築く」
--働き方改革への対応も欠かせない。
「ワーク・ライフ・バランス(WLB、仕事と家庭の調和)のためにも、まずは適正な工程と施工条件かどうかを見極めた受注活動を徹底する。DXにも注力し、タブレットなどで多くの業務が完結できる環境を整備した。現場は事務作業を現場支援グループに集約している。今後も現場負担の軽減に努める」
--経営トップとして、社員に何を伝えていくのか。
「学生時代から自分の可能性を信じ挑戦してきた。海外勤務や新規事業立ち上げなど、多くの経験が『可能性』を広げる。社員にも会社にも無限の可能性がある。その思いを経営の中で伝えていく」。
(12月18日就任)
(くりはら・よしひろ)1994年早稲田大学理工学部卒。古河電気工業を経て、99年栗原工業入社。シンガポール駐在や開発営業、新規事業立ち上げなどを経験し、2023年代表取締役専務全社副統括。気さくな人柄で、全国の拠点を回り社員の声を聞く。休日はゴルフ、ジムで体を動かし、家族との時間も大切にする。大阪府出身、54歳。








