エナジーO&M、関電工/グリーン電力支える風車メンテ、人材育成の大切さ問いかけ

2025年12月24日 企業・経営 [5面]

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 国内にある発電用風車を、これから誰が支えていくのか--。関電工グループのエナジーO&M(東京都墨田区)の大塚豊社長は「風車のメンテナンスに関わる人材の育成には時間がかかる」と指摘し、現在直面している人手不足の深刻さを訴える。風力発電の単年導入量は2024年に過去最高を記録した。設備が拡大する一方で、「国の補助や援助がなければ、メンテナンス要員が本当に足りなくなってしまう」と警鐘を鳴らす。
 千葉県銚子市は風況が安定しており、風力発電の適地として知られる。市内の農地には風車が点在する。日々回り続ける風車を支えているのが、運営・保守(O&M)を担う技術者たちだ。風車は厳しい自然環境の中で稼働し続けるため、定期的な点検や予防保全が欠かせない。同社は銚子市をはじめ、全国の風力発電所や太陽光発電所の保守を担っている。
 風車のメンテナンスは危険と隣り合わせだ。高所作業では、わずかな油断が重大事故につながる。重い工具を持ってはしごを登り、時には頂上部からロープで降下し、数時間ぶら下がった状態でブレードの点検や補修を行うこともある。現場では「落ちることは絶対に許されない」(同社担当者)として、安全第一の作業を徹底している。
 こうしたO&M事業の実態を知ってもらおうと、関電工とエナジーO&Mは11月、報道機関向けに風車の登頂体験会を開いた。参加者は事前に安全装備の説明を受けた後、ハーネスなどを装着し、銚子市内のキャベツ畑にそびえ立つ高さ約60メートルの風車に登った。
 タワー内部には垂直に伸びるはしごが設けられている。登る際は、足で体を支えることが求められ、慣れない姿勢では体への負担が大きい。頂上部からは、眼下に広がるキャベツ畑や太平洋の水平線が見渡せる。同社担当者は「この風景が忘れられず、当社を志した若手もいる」と話す。登頂体験は、現場への理解を深める機会にもなっているという。
 同社の技術者は、風力発電専門の研修施設「FOMアカデミー」(福島市、渡辺誠理事長)で、高所作業や救助訓練、国際基準に基づくトレーニングを受けている。風車のメンテナンスは「ゼロから学ぶ必要がある分野だ」と大塚社長は話す。既存の資格だけでは対応できない点も多く、一人前になるまでに年数を要することが、担い手確保の難しさにつながっている。
 「やりたいからといって、すぐにできるわけではない。どのように人材を育成していくかが、今の課題だ」と大塚社長は強調する。
 地域の風景に溶け込む風車は、過酷なメンテナンスを担う技術者の活躍と、担い手を育てようとする努力の積み重ねによって、グリーン電力を生み続けている。風力発電の導入が進む中、足元を支えるO&Mと人材育成の大切さが、改めて問われている。