◇新組織設立の狙いは─
JR東日本は2025年12月に「スペースユニット」を立ち上げた。鉄道と宇宙をつなぐ新たな取り組みを担う部署だ。同社は新たな経営ビジョン「勇翔2034」で、宇宙を都市、地方、世界と並ぶ「価値創造のフィールド」と位置付けている。災害時の状況把握、衛星測位を活用した列車制御などの実現を目指す。新組織の狙いと今後の展望を、ユニットリーダーの西村佳久執行役員イノベーション戦略本部統括に聞いた。
--スペースユニットが始動した。
「ユニットは25年12月8日に職員10人体制で発足した。マネジャー2人は専任で、残る8人はイノベーション戦略本部との兼務となる。宇宙分野は『勇翔2034』で掲げた成長エンジン『技術力の深化と進化』の方向性の一つだ。技術を学び、事業部門に導入していくのがわれわれのミッションであり、一つ一つ着実に進めたい」
--当面の対応を。
「三つの柱で取り組んでいく。一つは、災害時などに線路沿線の設備状況を宇宙から迅速に観測することだ。宇宙からの観測技術は進歩しており、光学衛星や合成開口レーダー(SAR)衛星など、さまざまな手段がある。将来は倒木の有無など被害の予兆を把握するための研究にも取り組みたい」
「二つ目は衛星位置情報の活用だ。GNSS(全球測位衛星システム)が進歩し、現在はセンチ単位で位置を把握することができる。衛星からの情報を基に列車制御が可能になれば、列車位置を把握する地上設備が不要になる。同様に、位置情報を活用した改札サービスも考えられる。地方では改札機のない駅も多い」
「最後の三つ目は緊急時用の衛星通信だ。これはすぐにでも導入できると考えている。今後は、平時の列車と地上との通信にも活用できないか検討したい。これまで地上の無線設備を減らす研究も進めており、衛星通信を活用できる余地はある」
--衛星活用は課題も多い。
「被害状況などの観測データを、必要なときに確実に入手できるかが課題だ。現在は多くの衛星が運用されている。情報をタイムリーに入手するため、さまざまな企業と連携したい。鉄道は安全・安定が最も重要だ。トンネル内や衛星を捕捉しにくいエリアで他の通信方法を併用するなど、複数の手段を組み合わせることになるだろう」
--今後の事業戦略をどう考える。
「最も先行しているのは列車制御だが、安全・安定に直結する分野だけに、実証実験を丁寧に進めたい。衛星観測は一部で既に研究を始めているが、課題もある。光学衛星とSAR衛星の使い分けも含め、最適な手法を見極める。さまざまな技術を持った企業や団体、例えば宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、スタートアップ企業の支援やマッチングを行う枠組みである宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の活用も検討する」。
(JR東日本執行役員イノベーション戦略本部統括兼スペースユニットユニットリーダー)








