回転窓/顔が見えない相手

2026年2月12日 論説・コラム [1面]

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 駆け出しの頃から、いまだに緊張する仕事の一つに電話応対がある。プライベートで使うくだけた言葉を封印し、相手に失礼がないよう細心の注意を払って用件を伝える。正しい日本語を選び、やりとりする行為は、想像以上に難しい▼反対に、自分の名前を言わずに、用事が済むとさっさと電話を切る人もいる。ストレスを発散したいのか、乱暴な言葉を相手に浴びせる人もおり、そうした人と遭遇するたび、気がめいってしまう▼取引先などから過度な要求を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)は、社会問題になっている。改正労働施策総合推進法の施行に伴い、10月には企業にカスハラ対策が義務付けられる。今よりも状況が良くなればと、願ってやまない▼人は数分会話しただけで、相手の印象を決め付けてしまう。顔が見えない電話であれば、なおさらだ。言い回しが乱暴だったり、声のトーンが暗かったりすると、あっという間に印象を悪くしてしまう▼顔が読者に見えない点では、新聞記者も似ている気がする。物事を俯瞰(ふかん)し、偏りのない記事を書く。顔が見えないからこそ、丁寧な文章を心掛けたい。