地震、火山噴火、感染症、テロ--。政治、経済、行政、金融の中枢が集積する東京は、常に複合的なリスクと隣り合わせにある。ひとたび都市機能が失われれば、その影響は首都圏にとどまらず、日本、さらには世界にも波及する。小池百合子東京都知事は「首都防衛」を掲げ、都を挙げて都市の強靱化に取り組んできた。相次ぐ自然災害や国際情勢の緊張が危機意識を高める中、首都・東京を守る取り組みは、もはや行政だけに委ねられた課題ではない。産学官の枠を超え、あらゆる主体が総力を結集し、前例のない備えに動き始めている。(編集部首都防衛取材班)
「首都・東京の強靱化は、東京を守るだけにとどまらず、日本全体を災害に強くするためにも重要だ」。東京都の都市政策を統括する谷崎馨一都技監兼都市整備局長は、語気を強め首都防衛の大切さを説く。危機管理の重要性は年々増している。
東京には政治、行政、経済、金融といった機能が集中する。それらの全部あるいは一部が一瞬でも止まれば、日本だけでなく世界的な混乱を招きかねない。都は、関東大震災から100年の節目となる2023年度から、多岐にわたる強靱化施策を一体的に進める「TOKYO強靱化プロジェクト」を立ち上げ、本格的に動き出した。
プロジェクトは「五つの危機」として風水害、地震、火山噴火、電力・通信等の途絶、感染症への対応を掲げる。自治体の計画としては珍しく、具体的な事業規模を明示している点が特徴だ。40年代半ばを目標に、事業全体で17兆円、当初10年間に限っても7兆円を集中投資し、災害に対抗する力を高める。
強靱化施策の中でも特に力を入れているのは、小池都知事が災害対応の「一丁目一番地」と位置付ける無電柱化だ。今後、宅地開発時の電柱新設を原則禁止とする新たな条例を制定する方針。昨秋の台風では島しょ地域を中心に多くの電柱が倒壊した。小池都知事は25年第4回都議会定例会で「電柱倒壊のリスクは島に限ったものではない。島しょ地域をはじめ都内の無電柱化を加速するべく、今後も力を入れていく」と所信表明し、取り組みを一段と進める方針を示した。
災害に対抗する力を着実に高めるとともに、都市の安全性を内外に発信していくことも重要になる。谷崎都技監は「レジリエンスを着実に進めることで、東京の国際競争力を維持し、安全な都市として世界から人や投資を呼び込むことにつながる」と期待を寄せる。巨大都市の機能的な“もろさ”は世界共通の課題だ。東京が蓄積してきた技術や施策を世界に発信し、防災技術の輸出にもつなげていく狙いがある。
プロジェクトは始動から3年。まだ序盤戦といえるが、以前からの取り組みも含め、成果は着実に現れつつある。谷崎都技監は「住宅の耐震化率の向上や浸水被害の棟数は、以前に比べれば大幅に減っている」と手応えを語る。「事前にどれだけ準備できているかが、首都防衛の要だ」。その言葉通り、ハードとソフト、自助・共助・公助を組み合わせ、東京は手だてを尽くして防災対策を進めていく。
(次回から4面、第2・4木曜日に掲載)







