エイト日本技術開発が立ち上げた新たな技術開発部門「ファノベイトラボ」が、成果を着々と積み上げている。社長直轄で多国籍の優れた人材を集めたユニークな組織だ。独自の視点からロボットやAI、ドローンなどさまざまな分野を横断し、独創的なアイデアを形にしている。今後は多国籍チームの強みを生かし、アジア圏などに照準を定め、海外進出も視野に入れる。
ファノベイトラボの名称は「Fan(楽しく)+Innovate(革新する)+Labo(ラボ)」を組み合わせたもの。より楽しく、フラットなチームで技術を開発したいという思いを込めた。技術本部のEJイノベーション技術センター(EJITセンター)内にあるインフラ技術グループを母体とし、2025年6月に産声を上げた。
ファノベイトラボはリーダーの菖蒲迫正之氏、開発を担当するルペシュ・マチャマシ氏とサハ・スバシュ・クマル氏、広報などを担う伊藤晴奈氏の4人で構成する多国籍チームだ。発足当初から海外展開を見据え、海外出身者を積極的に登用した。開発担当の2人はネパール出身。もともとマチャマシ氏が同社に在籍していた。その後、インドの大学で採用活動を行ったところ100人以上の応募があり、難関を突破したのがクマル氏だった。ラボの立ち上げメンバーを決めた時、偶然にも2人は同じネパール出身だったという。
ラボの主な役割は技術開発だが、開発した技術の事業化や社内外への導入支援、実装サポートも重要な業務だ。社内にとどまらず、大学などとの共同研究にも積極的に取り組む。研究開発だけでなく新規ビジネス展開も見据え、展示会などへ積極的に出展しているのも特徴の一つといえる。
EJITセンター時代と大きく変わったのは、社長直轄の組織となった点だ。社内の決裁手続きが迅速かつ円滑になった。加えて関係部署が減ったことで、外国企業との共同研究で相手方が求める厳しい守秘義務への対応も容易になった。研究開発は内にこもるだけでなく、成果を世に送り出すスピードも重要だ。「開発は生もの」と菖蒲迫氏は開発競争の厳しさを明かす。
分野横断もテーマの一つだ。ロボットやAI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、システム、画像解析、通信などさまざまな最新技術を組み合わせ、付加価値を生み出すのがファノベイトラボの狙いだ。アイデアマンの菖蒲迫氏は、思いついたアイデアを書き留めるノートを寝る時も枕元に置いている。
最近では、水路や橋梁、港湾施設の点検で効果を発揮するボート型(水上)ドローン「Flemolar(フレモラ)」や、危険な場所に進入できる小型のクローラー型ロボットを開発した。フレモラは、従来の水上ドローンにはない非GPS(衛星利用測位システム)環境下での自律航行機能を搭載。アタッチメントや水面条件に応じて船体を伸縮できる点もユニークだ。
クローラー型ロボットは、人が立ち入れない場所の点検で能力を発揮する。下水管のように水がある環境にも問題なく進入でき、悪路やがれきの上も走破可能だ。災害直後の危険箇所や火山地帯、狭い橋の下や下水管内などを対象に、点検作業での活用が期待されている。
独自開発だけでなく、事業部門からの依頼にも応える。資料や報告書に添付する画像に映り込んだ第三者の顔などを自動でマスキングするツールは、事業部門から高い評価を受けている。橋梁保全部門の依頼で作成した簡易洗掘調査カメラは、360度カメラやライトなど既製品を組み合わせた。橋梁調査の現場で利用頻度が高い。
インフラマネジメントの需要が高まる中、注目されているのがインフラデータ管理システム「inMAP」だ。インフラに関するさまざまなデータを地図上に集約し、即座に呼び出せるようにした。画像処理を手掛けるきもとと共同で、地図と360度画像を組み合わせた機能も開発した。今後、売り込みを強化していく技術の一つだ。
今後は多国籍チームの特長を生かし、アジア圏でのビジネスにも目を向ける。同社の現地法人があるタイでは、技術セミナーの開催や関連企業への技術移転に取り組む。フランスで開かれる国際会議への出展など、海外へ積極的に展開する。「人命救助ができるロボットの開発に力を入れたい」と菖蒲迫氏。人員体制の強化も計画しており、26年度からはトリニダード・トバゴ出身のメンバーが加わる予定だ。「社会の困りごとに、ひらめきと技術で答えを出す」との意気込みで新境地を切り開く。






