◇公共事業で利用へ理解醸成促す
東日本大震災からの福島県の復興は、原子力発電所の事故に伴う環境再生が依然として大きな課題となっている。大熊町、双葉町の中間貯蔵施設には除去土壌が約1400万立方メートル残ったまま。環境省は2045年3月までの県外最終処分に向けて、復興再生利用や埋立処分の基準などを定めるとともに、公共工事などで利用するための理解の醸成に努めている。
大熊町の産業交流施設「CREVAおおくま」に25年3月15日開設された中間貯蔵事業情報センター。中間貯蔵の事業や除去土壌の復興再生利用を知ってもらおうと、視覚に訴える展示にこだわっている。貯蔵のために土地を提供した地域の思いが伝わるよう、バーチャルシアターの映像やデータ、情報を展示。受け入れが決まった14年12月当時の住民に宛てたメッセージには「無念は、察するに余りある」と書かれている。
展示の目的の一つには、除去土壌の規模感を知ってもらうことがある。中間貯蔵施設に運ばれる除去土壌などの量は東京ドーム約11杯に相当。約4分の1を占める1キロ当たりの放射能濃度が8000ベクレル超は減容化した上で県外最終処分する。残り約4分の3の8000ベクレル以下の濃度の低い土壌は、適切な施工・維持管理を前提に復興再生土として公共事業などで使う。環境省の担当者は情報センターから「大切な土地を提供いただいた大熊町、双葉町の方の思いも発信したい」と話す。
中間貯蔵施設の区域内には、8工区の貯蔵施設、3工区の廃棄物貯蔵施設、大熊町仮設焼却施設、双葉町仮設焼却施設・仮設灰処理施設、道路盛り土実証現場がある。帰還困難区域を除く8県100市町村の面的除染は18年3月19日までに完了。同区域以外からの搬入は22年3月までにほぼ終えた。現在は帰還意向のある住民のための除染やインフラ整備を行う特定帰還居住区域整備事業からの搬入がある。福島県内に約1370カ所あった除去土壌などの仮置き場は10カ所に減った。
大熊3工区の貯蔵施設では、170万立方メートルほどの貯蔵がある。除去土壌は15メートルほど積み上げ、汚染のない通常の土を60センチほど覆土し、芝にした区画がある。覆土による遮蔽(しゃへい)効果は99%という。大熊1工区の受け入れ分の分別施設だった建物は、復興再生土の保管施設として使用中。25年には首相官邸や東京・霞が関の中央省庁の庭、花壇に使う土を搬出した。
道路盛り土実証現場には、1日の交通量が4000~2万台の一般的な道路規格に基づく歩道付きの構造物がある。道路盛り土への復興再生利用を想定し、性質の異なる復興再生土を盛り土本体に使い、設計、施工、維持管理の課題や安全対策を検討してきた。知見は復興再生利用に関するロードマップに沿って、利用のためのガイドラインの拡充・見直しに生かされていく。
中間貯蔵施設の区域内には、海渡神社(大熊町)、正八幡神社(双葉町)のように、今も地域の人々のよりどころが多くある。海渡神社は立ち入りの許可を得た住民が日隠山に沈む夕日を春分の日と秋分の日に眺める「夕日を見る会」が行われている。正八幡神社は、22年に住民がしだれ桜を植樹した。離れて暮らす地元住民が近況を語り合う機会が設けられている。
環境省によると、県外最終処分の認知度は県内が約5割なのに対し、県外は約2割にとどまる。それでも利用の安全性と必要性は「そう思わない」の割合が減少してきた。県外最終処分は「法律に明記された国の責務、地元との果たさなければいけない大切な約束」(同省幹部)。公共事業などでの利用に向け、理解の醸成を促し、関係省庁との協議を続けていく。







