建設経済研究所は、建設技能者の流動的な働き方に関する調査結果を公表した。建設業で労働者派遣が禁止とされる中、現場の繁閑調整に役立つ既存の制度が十分に活用されていない現状を整理。建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴データなどから、派遣に酷似した「応援」と呼ばれる慣習に頼っている実態も確認した。繁閑調整は「日給制から月給制への移行や雇用の安定化に必要不可欠」とし、「流動的な働き方が正々堂々と行える仕組みや制度が必要だ」と訴えている。
繁閑調整の既存制度は▽建設業務有料職業紹介事業▽建設業務労働者就業機会確保事業▽労働組合による労働者供給事業▽在籍型出向-の四つを取り上げ、運営団体などのヒアリングを通じて分析している。
2005年創設の就業機会確保事業は、海上土木工事での運営に特化している日本海上起重技術協会を除き、ほとんど活用実績がない。余剰労働力の雇用維持という制度導入当初の目的は、人手不足が深刻化する現状とはかけ離れており「実効性に欠ける」との声がある。事前の届け出の必要性や手続きの煩雑さがネックで、使い勝手が悪いとの意見もある。応援の慣習がある中、柔軟な融通が可能な制度への見直しや新しい制度の策定、手続きの簡素化などの検討が必要だと指摘している。
就業機会確保事業の厳格な許可要件を満たせない事情から、職業能力開発の一環として行うなど一定の要件を踏まえ在籍型出向を運用するケースがある。全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)は在籍型出向のマッチングシステムを会員企業間で展開し、技能研さんの機会創出につなげている。ただ、繁閑調整の仕組みとして在籍型出向を広げていくには、出向契約などの事務手続きをシステム化して簡素化する必要があるとした。
現状は公的な制度に加え、応援の慣習が繁閑調整機能を担う。CCUSの就業履歴データからは応援の形跡を確認。複数登録している所属事業者を一時的に変えながら入場しているケースがあった。CCUS登録技能者らへのアンケートでは「閑散期に同業他社で仕事に従事している」との回答が半数前後に達した。
調査結果からは、流動的な働き方を認める仕組みの確立が、閑散期の就業機会の確保にとどまらない効果をもたらすことを明らかにしている。人手不足下で労働力の供給面の寄与が期待できる。技能向上が生産性向上や業界・企業の利益向上に結び付き、技能者の賃金上昇につながる可能性もある。仲介業者による不当な搾取を防ぐため、流動化の促進にCCUSを連動させることが有効とも指摘している。







