建設工事費の上昇に伴い、地方自治体の公共施設整備に深刻な影響が出ていることが日本総合研究所(日本総研)の調査で浮き彫りになった。ほぼすべての自治体が施設整備で「工事費が高騰している」と回答。7割以上は過去3年間で入札の不落が4件以上あった。再公告、契約変更も多い。日本総研は工事費を抑制できる方策の検討や代替プランの用意に加えて、官民対話による予定価格の設定、性能発注からの選択肢の拡大などが必要と提言している。
「建設工事費高騰時代の公共施設整備」について、特別区を除く人口5万人以上の基礎自治体557団体を対象に1月30日~2月20日に回答を求めた。工事費の認識は、1団体を除くすべての自治体が「非常に高騰」または「高騰」と回答。この5年間で高騰を実感した自治体が8割を超えた。「上昇が止まり、横ばい」という回答は3団体にとどまり、上昇局面が続くとの見方が大勢を占めた。
入札の不落の理由は「価格が合わない」が7割を超えて最多、次いで「工期が厳しい」だった。価格が合わないと回答した自治体は、事後の対応として「建設工事の内容を大きく変えずに予定価格を高くして再公告した」が半数を超えた。回答割合は、予定価格を変えないバリューエンジニアリング(VE)やコストダウンを行った上での再公告と、事業手法の見直しがそれぞれ約2割だった。
半数以上の自治体は、物価スライド条項の適用や物価上昇を理由に契約変更を実施し、工事中の工事費上昇に起因する変更を行ったことも分かった。最も多い変更は「工事内容は大きく変えず契約金額を増額した」で、回答割合の9割を超えた。インフレスライド条項の適用は7割以上あり、全体スライド、単品スライドの条項適用がともに2割ほどだった。物価スライドの指標は、建設物価調査会発行の建設物価が最も多く利用されていた。
4割は今後5年間で1万平方メートル以上の整備・改修が「ある」「あるかもしれない」としている。工事費が上昇し「新設または建替の要否をこれまで以上に慎重に見極めた上で行うと思う」という回答が8割を占めた。複数回答を求めた「工事費を抑制する工夫」には、7割以上が「集約化、複合化などの施設面積縮小」を挙げた。「PFIなどの民間ノウハウ導入」と「補助金活用」がともに約5割、「新築ではなく改修の実施」が約4割を占めた。
回答を受け、日本総研は建築工事費の高騰と継続的な上昇は「今後も続くトレンド」として、構想・計画段階からの延べ床面積圧縮といった工事費を抑制する方策の検討が必要と指摘した。高騰が想定以上の場合の代替プランを用意する必要もあるとした。不落は官民の負担になり、時間の経過から工事費のさらなる増加が懸念されるため、公告前から官民が十分に対話し、「市況を踏まえた予定価格」を設定することが肝要だとした。
民間が設計・建設・運営する事業は、落札から着工までの期間の物価上昇に不確実性があり、「官民連携事業を避ける傾向がある」と現状を報告。個別発注の従来方式、ECI方式とも工事費の抑制は確実ではなく、性能発注で選択肢を広げる官民連携事業が工事費削減の可能性が高まると分析した。公共施設と民間施設の整備を誘導し、新たな財源を生み出すことに取り組む必要があると求めた。







