◇教育はコストでなく人への投資
富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を運営する全国建設産業教育訓練協会の会長に、大木勇雄氏(日本建設躯体工事業団体連合会〈日本躯体〉会長)が先月就任した。入職者不足が深刻化する今だからこそ、教育訓練機関の中心を担う「センター・オブ・センター」としての役割を認識。「プレイングマネジャーとして自ら運営しながら、建設産業の教育訓練の新しい在り方を示す」と意気込む。
--就任の抱負は。
「2027年に開校30周年を迎える。この30年を振り返りつつ、将来も永続的にセンターを発展させるため、次代を見据えた飛躍の年にしたい。これまで3代の会長が難局を乗り越えてきて今がある。尽力に感謝したい。重い責任に身の引き締まる思いだ」
「建設産業は多くの課題を抱えるが、特に、現場を支える入職者の不足には危機感を持っている。教育訓練の重要な役割をもっと強調したい。センターで技能を身に付け、働くことの楽しさや喜び、達成感を味わってほしい」
--教育訓練の必要性をどう訴える。
「受講生を送り出す企業にメリットを発信し、意識を変えていきたい。人手不足の中、現場を離れて教育させるのは大変だと思う。受講の前後でスキルが目に見えて違うと実感してもらえる教育を提供していかなければならない。教育訓練をコストではなく、人への投資と考えてほしい。送り出す企業には、受講させた成果の生の声を聞いていく。わたし自身も講師と意見交換し、受講生とも身近に接したい」
--今後の教育訓練の方向性は。
「これまでは個々の企業や現場、職長ごとに、いわば自己流でやってきた。足場を例に取っても、地域や企業で組み方も専門用語も異なる。どこでも安全や品質が担保されるよう、センターで標準的な組み方を教えることが重要だ。統一的なマニュアルに基づいた教育訓練も今後必要になってくるだろう。業界全体で同じような教え方をするには、相当なエネルギーがいる。センターが旗振り役となり、他の教育訓練機関とも一緒に目指したい」
「建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴は、その人が転職してもたまり続ける。統一的な教育訓練は、労働移動の活発化を前提とした環境でこそ必要だ。AIの発達で産業構造が変わり、異業種からの転職が盛んになる可能性もある。現場経験のない人が学ぶ場としてセンターの重要性は増していくのではないか。育成就労制度が始まり、外国人材を熟練労働者に育てる機運も出てくる。CCUSと連動したスキル向上とキャリア形成に向けた教育訓練を官民で構築していく」
--新たな教え方に対応した講師の育成も求められる。
「自己流であってはいけないが、『俺の背中を見て覚えろ』という従来のやり方は、決して悪いわけではない。立派な職人であれば自分のスタイルに自信を持つべきだし、その良さを後進は見習うべきだ。従来の良さを生かしつつ、普遍的で最新の知見に基づいた教え方を追求する。その両方が備わっていれば受講生への説得力も高まるだろう」。
(おおき・いさお)1972年日本大学理工学部建築学科卒、竹中工務店入社。80年大木組入社、90年社長、現在は名誉会長。団体活動では2018年5月から日本躯体会長。趣味は近代建築巡り。東京都出身、76歳。








