開湯1200年の歴史があり、武田信玄も湯治に訪れた甲府市の湯村温泉。この温泉街を復活させようと、甲府観光開発(甲府市、笹本健次社長)が再整備に乗り出した。同社と市の予算も合わせ、総事業費20億円超を投入。マルシェやジュエリープラザ、バスターミナル、足湯などの建設を計画する。最盛期には40以上の温泉宿が軒を連ねたにぎわいを取り戻す取り組みが始まった。
2021年に湯村温泉旅館協同組合、昇仙峡観光協会、JTBの3者の出資で設立した新会社・甲府観光開発が再整備を主導する。同社の社長に就任した笹本氏は、温泉街屈指の名旅館「常磐ホテル」の社長も兼務する。
客足が遠のいた湯村温泉街では過去にも複数回、再整備計画が持ち上がったものの、資金や人材面が折り合わず計画に進展はなかった。東京で出版社を経営していた笹本氏は一念発起し帰郷。温泉街の現状を打破するため、地元の銀行や企業、市に根気強くかけあい、協力を取り付けた。
再整備の対象範囲を「温泉街の入り口から800メートルの区間」に絞った。25年8月に創業100年を超える老舗「旅館明治」を大規模リニューアルしたことを皮切りに、26年度は集客の核となる施設を複数建設する。
テーマは「やまなしの“ほんもの”と出会う場所」。革製品の「甲州印伝」、果物、ワインなどの特産品を販売するマルシェや、ジュエリーの販売と見本市を開催できるプラザを新たに設ける。「山梨には良いものがたくさんあるが、PRがうまくいっていない」と笹本氏。再整備では単に宿泊にとどまらない来訪の目的づくりを行う。各施設は27年春の全面開業を目指す。
車がないと移動が難しいという地方観光の弱点にもメスを入れる。常磐ホテルと甲府記念日ホテルの敷地の一部を使い、バスターミナルと駐車場を整備。昇仙峡やリニューアルが進む遊亀公園付属動物園などを周遊する「山梨版はとバス」(笹本氏)の発着場となる。キャパシティーに限りがあるJR甲府駅のロータリーを補完する。
甲府観光開発の積極果敢な姿勢に市も共感。税収増を理由に、市は26年度予算に道路舗装費1・1億円、マルシェ建設費3・5億円の総額4・6億円を計上した。
建設費や物価の高騰など課題も多いが、笹本氏は「手をこまねいていても何も始まらない」と話す。「温泉街の再生は一世代で終わるようなものではない。次世代がしっかりと引き継げる土壌をつくる」ため、笹本氏や地元の挑戦は続く。









