キーワードを入力するだけで、AIエージェントが条件に合う場所を特定してくれる。そんなサービスが実用段階に入った。ジオテクノロジーズ(東京都文京区、八剱洋一郎社長)のAIエージェントは、地図情報に加え、人流や購買、画像データなどを学習・解析。「急カーブの多い道を抽出して」「変わった形の郵便ポストを探して」といったキーワード検索に応え、利用者の意思決定をサポートする。
同社は、地理空間情報と自律型AI基盤を組み合わせたAIエージェント「GeoTechAgent」の提供を4月に始めた。人間の主観やニュアンスを含む自然言語で高度な空間解析ができるのが特徴だ。日常の言葉で入力するだけで、条件に合う場所を即座に特定する。
AIが地理空間情報を理解できるよう、最新技術を取り入れた。同社独自のデータから関連情報を検索し、回答精度を高める「RAG」や、AIと外部システムを円滑に連携させる接続規格「MCP」を採用。自社データに直接アクセスし、正確な回答を生成するとともに、将来の機能追加にも対応できる拡張性の高い基盤を構築した。
AIエージェントは、機械学習を出発点に、自然言語対話、時間軸予測、エコシステム構築へと段階的に機能を高度化していく。「急カーブの多い道」は地図データ、「変わった形の郵便ポスト」は画像データから回答する仕組みを実現している。
「生きたデータを集める仕組みが確立できているのが強み」と話すのは、中村比呂記氏(最高AI責任者〈CAIO〉)。精度の高いデータは、AIによる分析の信頼性を支える土台になっている。
同社は1995年、自社整備の地図サービス「MapFan」の提供を開始した。豊富な地理空間情報を基に、目的地までの最適な経路を案内する。車、自転車、徒歩に加え、大型車向けのルート検索にも対応。地図は車載カメラの映像などを基に作成し、毎月1回更新している。常に新鮮な情報を蓄積し続けているのが強みだ。
2020年には移動するだけでポイントがたまるアプリ「トリマ」をリリースした。5月時点の累計ダウンロード数は2500万件に達した。同社によると、利用者の同意を得た上で、1日当たり約10億件の位置情報を取得している。レシートの写真を投稿するとポイントがたまる機能もあり、購買データも取得できる。年代や性別などの属性に加え、移動ルートなどのデータも収集している。
写真投稿型アプリ「ジオクエ」は、街中のビルや駐車場など指定施設を撮影するとポイントがたまる。利用者が投稿した画像は、同社の地図や道路規制情報の更新に活用される。さまざまなアプリを通じて集めた膨大で最新のデータが、AIエージェントの信頼性を高め、さらなる進化につながっている。
一般的な生成AIは現在、空間情報の意味を理解することが苦手という。「ある地点間を移動したい」と入力すると、インターネットの文字情報を参照して回答する。誤った情報やもっともらしい誤回答を生成するリスクがあるため、信頼性には課題が残る。
国主導では、地理空間情報とAI技術を組み合わせた「ジオAI」の研究が進む。内閣官房と国土交通省は2月、「ジオAI研究会」を立ち上げ、地理空間情報とAIを組み合わせる取り組みについて産学官で議論を開始した。5月にまとめた中間整理では、防災・減災や都市計画、交通分野などでの活用が見込まれるとした。
AIで機械やロボットを動かすフィジカルAIと、空間を理解するジオAIを連携させることで、ロボット単体の動きだけでなく、街全体の物流や交通網を最適化する未来も展望する。ジオテクノロジーズも同研究会にGeoTechAgentの事例を提供し、議論を後押ししている。
中村氏は「行政機関が保有するインフラデータの公開が進めば、さらにAI活用の可能性が広がる」と話す。地理空間情報は世界各国で整備が進み、国交省によると「質・量ともに充実した状態」にある。急速に進化するAIとの融合によって、インフラの整備・維持管理や国土保全、都市計画がどう変わるのか。今後の展開に注目が集まりそうだ。
□ジオテクノロジーズ沿革□
1994年パイオニアの全額出資でインクリメントPとして設立。カーナビ地図開発が主力事業。2021年パイオニア傘下から独立。22年から現社名。移動でポイントがたまるアプリ「トリマ」など消費者向けサービスの展開も進める。











