リーダーを最後に支えるのは能力でも経験でもない--。そんな言葉を耳にすることがある。確かに、困難な局面で政治や経営を前に進めるには、腹をくくり、自らを信じて決断する覚悟が欠かせない▼だが、自信が陶酔に変わった瞬間、周囲は息苦しくなる。厄介なのは、自分の思惑を「みんなのため」と信じ込み、異論を遠ざけることだ。人は驚くほど簡単に、自分に都合のいい物語へ逃げ込んでいく▼「結果が出れば理解される」。そう言って耳を閉ざした先に、組織が行き詰まる場面を取材で何度も見てきた。リーダーとは現実を引き受ける人だ。功績は周囲に譲り、少なくとも失敗の責任だけは自ら負う。その覚悟こそが、組織への信頼を支える▼「強いリーダー」を演じる人は少なくない。だが、本当に人がついていくのは、耳の痛い声から逃げず、責任を引き受ける人ではないか。人は結局、言葉ではなく背中を見る▼都合のいい思い込みに流されず、責任だけは他人に押しつけない。その姿勢は苦しい局面ほど試される。だからこそ、自分は本当に先頭に立つ覚悟があるのか。その問いを忘れず、自戒を込めて襟を正したい。








