みんなで守る-防災庁始動・下/弱部洗い出し実効性ある対策

2026年11月2日 行政・団体 [1面]

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 7月に発生した2026年熊本地震は、生産施設の煙突が倒壊し、商業施設の爆発事故も起きた。千葉県や神奈川県、石川県などで甚大な被害が発生した8~9月の大雨は、災害に対する都市部の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにし、水害や土砂災害対策を一段と強化しなければならない現実を突き付けた。
 防災庁が担う役割に、災害被害想定の精度の向上・高度化と、分野横断のシミュレーションに基づいた科学的な災害リスク評価がある。災害に対する社会、地域の「弱部」をあぶり出していく。これまでの防災対策は、国がまとめた被害想定の解像度を都道府県が高め、必要な対策が立案されてきた。防災庁設置後は、都道府県の被害想定を踏まえた地域単位のシミュレーションによって、必要な機能や物資の過不足が分析され、不足を弱部と捉え、実効性の高い対策が検討されることになる。
 負傷者の救助であれば、救助する側の消防や自衛隊などの人員とともに、救急車両が走行する道路、医療機関の病床、ライフラインなどを調査する。弱部への対応は、地域防災計画や孤立想定地域の対策、ライフラインの復旧計画などに反映される。どれもが地域に必要なインフラ整備の前提となるだけに、公共事業や国土強靱化につながる。同庁は分析の対象とする災害の拡充、新たに顕在化した災害の課題の検討、AIによるリスク評価などによって、事前防災の実効性の向上に取り組む。
 防災技術の研究開発・実装と防災産業の振興発展も担う。非常時の水処理や衛星を利用した災害予測技術のように、防災・減災の効果が高いながらも、ユーザーの知識や認知が不足していたり、需要が小さく追加投資が難しくなったりする課題がある。同庁は、技術の開発、商品化・サービス提供、公共調達からの需要創出、社会実装を主導する。
 「マーケットを取り込む。省庁に関係予算を配分し、インフラの海外輸出プロジェクトの中で対応することも考えられる」(内閣官房幹部)。防災技術は、官民の投資を促す政府の成長戦略に位置付けがあり、同庁の「目指すべき姿」には、日本企業の防災分野の海外売上総額を30年に約2兆円規模まで拡大することを盛り込んである。
 同庁発足を控えた10月21日のアドバイザー会議で福和伸夫主査は、再発が懸念されてきた熊本地震が、また起きてしまったことから「災害を通じて明らかになった課題を受け止め、今後の対策に生かす必要がある」と指摘した。建設業の担い手を確保するために「平時の事業量を増やす」ことも求めた。土木・建築工事を行いながら、災害の応急復旧に臨む地域建設会社をはじめ、建設産業の各社が地域の守り手、防災・減災の担い手として機能しているためだ。建設業が担う役割と果たすべき責務は、同庁の設置に伴ってさらに大きくなる。
 (編集部・遠藤千智、溝口和幸)