AI技術の普及などでデータ処理需要が高まる中、東北地方にもデータセンター(DC)の建設適地を探る視線が向けられている。政策投資銀行(政投銀)東北支店は、地方への分散が課題になっているDCの立地条件や建設・運用コストの観点で調査した。寒冷な気候と土地確保のしやすさ、人材の集積状況から東北は「(有力地とされる)北海道や九州と同様に適地性がある」と分析。建設を促進するには「電力・ネットワークインフラを整備しながら地理特性を生かし、コスト競争力を高めることが重要」と提言している。
国内のDCは8割強が関東・関西圏に集中しており、通信インフラの優位性から東京や大阪など都市集中型整備が主流になっている。一方、用地枯渇の懸念や電力利用のひっ迫回避、災害レジリエンスの観点から地方への分散も増加する見込み。政投銀東北支店は「東北地域におけるDC適地性についての調査」を公表。東北は「首都圏との距離や地価の水準、冷涼な気候で冷却コストが低減できる強み」などがあり「生成AIなどで拡大する利用需要を取り込める」と報告している。
通信網は大都市圏を中心に構築されており、地方部は通信速度が立地を妨げる要因になる。東北では宮城と秋田に海底ケーブルの陸揚げ局があり、石狩~秋田間の海底ケーブル増設や秋田~九州間の新設なども計画され、通信インフラの冗長性が強化されつつある。
一方、ほかの有力地に比べ事業者の進出意欲が低く、適正地としての認知度の低さも課題になっている。
調査を担当した政投銀東北支店の田野崎大地氏は「DCが立地すると、周辺環境が整備され同様の大型施設への投資が連鎖的に発生しやすい」と指摘する。今後の事業者進出と関連する環境整備の動向を注視する必要がありそうだ。