地震と豪雨による「複合災害」への対応策を検討している国土交通省の有識者検討会が12日、提言案を公表した。能登半島で2024年1月に起きた地震と、同9月の豪雨による災害を踏まえ、課題と取り組むべき施策を提示。▽リモートセンシングの活用▽安全度評価手法の開発▽応急オペレーション体制の強化▽土砂・流木災害を考慮したハザードマップの導入▽土砂・流木捕捉施設整備や堤防強化などの具体策-などを明記した。検討会は有識者委員の意見を踏まえ、近く提言を正式決定し国交省に提出する。
同日、「能登半島での地震・大雨を踏まえた水害・土砂災害対策検討会」(座長・戸田祐嗣名古屋大学大学院工学研究科教授)の第3回会合を東京・霞が関の省内で開き、提言の最終案を議論した。
提言案では気候変動や巨大災害の切迫により、複合災害の危険性が高まっていると指摘。その上で能登半島と同様の複合災害が発生した場合を想定し、現状の課題と早期に講ずべき対策を示した。「地震による河道閉塞(へいそく)と大雨による土砂・流木対策」と「地震による堤防沈下・損傷と大雨による河川氾濫」の2通りのシナリオを想定し、対応するタイムライン案も示した。
早期に講ずべき対策については「先発災害後の応急対応力強化」と「平時からの土砂・流木対策」に整理。先発災害後の応急対応力強化では▽被災エリア全体のリスク把握、安全度評価手法確立▽先発災害後の施設や地形変状への対応力強化▽先発災害後の状況変化に応じた柔軟な対応▽オペレーション体制構築▽都道府県、市町村への国の技術的支援-の五つを挙げた。
リスク情報の周知や抽出と対応すべき危険箇所の優先順位付け、代替設備・機器の整備促進、訓練や人材育成などの具体策を示した。
平時からの備えでは総合的な河川土砂管理や施設整備、土砂・流木災害を考慮したハザードマップの導入などが必要と指摘。特に土砂・流木災害への対応として26年度までに危険箇所を全国で抽出する方針を示した。抽出基準として▽河川勾配200分の1となる地点から上流の流域面積3平方キロ以上▽渓流と河川を合わせ流出する可能性のある土砂量10万立方メートル以上-を提示した。
土砂・流木対策は上流の渓谷から河口まで関係者が連携し、全体的な視点から対策を進めるべきとした。