ダム協会が国交省と意見交換/休止・中止の事業化も検討、新設や再開発の推進を

2025年5月19日 行政・団体 [2面]

文字サイズ

 日本ダム協会(押味至一会長)は、国土交通省水管理・国土保全局との意見交換会を15日に同省で行った。ダム事業の推進、工事の適切な発注・契約、技術継承を議題に設定。同協会はダムの機能強化が求められ、災害の被害規模が大きくなり発生頻度も増している状況を踏まえ、新設や再開発の事業推進を申し入れた。同省は、事業が休止・中止のダムであっても選択肢から排除せずに検討を進める方針を説明した。
 ダム事業の推進に関しては、ダムの必要性を巡る広報に両者で力を入れることで一致した。下流域を守っていたり、災害を防いでいたりするダムの効果に対する理解を促す方針も確認した。発注・契約は、施工計画に現場の実態や条件が適切に反映され、物価や人件費の上昇などを含めて現場に見合った積算とするよう同協会から申し入れた。両者は現場の実態を巡る情報交換をはじめ「引き続きお互い頑張ろう」という考えを共有した。
 技術継承について同協会は「土木は経験工学」という認識から、事業の減少を課題に挙げた。若い技術者に喜んで現場で働いてもらうために、現場環境を都市と同等の生活水準としていくのに必要な対応を求めた。「同等以上が必要」とも指摘した。JVに関し、技術継承の観点から構成員の在り方の検討を求め、国交省は実績要件を緩和している取り組みなどを紹介した。
 冒頭、国交省の廣瀬昌由技監は「昨年末に逝去した足立敏之先生の思いをつなぎ、皆さんと一緒にダム、インフラの整備にまい進したい」と意欲を示した。その上で、気候変動に伴う大雨に対する洪水調節、水力発電の強化、利水需要の増加などを踏まえ、新規のダムの検討とともに「既存ダムの改造にしっかり取り組む」と表明した。「(元施工の)会社に知見、データがある。競争環境の中だが生かしていただきたい」とも述べた。治水、利水、洪水調節、発電の機能を併せ持つハイブリッドダムの検討に関し、施工者の知見に期待も寄せた。
 押味会長は「流域治水の要のダムは、国土強靱化実施中期計画の素案で進める方針という。ダムに期待される役割は大きくなる。施工に関する諸課題について意見交換する貴重な機会に感謝し、有意義にしたい」とあいさつした。
 参加者は次の通り。(敬称略)
 〈国交省〉
 ▽廣瀬昌由技監▽藤巻浩之水管理・国土保全局長▽森本輝水管理・国土保全局河川計画課長▽小澤盛生水管理・国土保全局河川計画課河川計画調整室長▽小島優水管理・国土保全局河川環境課長▽里村真吾水管理・国土保全局河川環境課流水企画室長▽笠井雅広水管理・国土保全局治水課長▽大野良徳水管理・国土保全局治水課事業監理室長
 〈日本ダム協会〉
 ▽会長・押味至一鹿島代表取締役会長▽企画委員長・乘京正弘飛島建設会長▽田野慎一郎青木あすなろ建設常務執行役員営業本部長▽池上徹安藤ハザマ副社長▽蓮輪賢治大林組副会長▽中谷泰之奥村組取締役兼常務執行役員土木本部長▽作田光生株木建設代表取締役専務執行役員▽岡市光司熊谷組代表取締役執行役員副社長▽大桑宗一郎鴻池組代表取締役専務執行役員土木事業総轄本部長▽勢田昌功五洋建設専務執行役員土木部門担当▽池田謙太郎清水建設代表取締役副社長土木総本部長安全環境担当▽木村普大成建設副社長執行役員営業総本部副本部長〈土木営業統括〉▽竹中康一竹中土木会長▽工藤啓鉄建建設常務執行役員▽清原啓太戸田建設土木工事統轄部顧問▽難波正和西松建設専務執行役員土木事業本部長兼安全環境本部長▽林伊佐雄日本国土開発社長▽吉田篤史フジタ取締役兼常務執行役員土木本部長▽中西隆夫前田建設代表取締役副社長▽専務理事・佐々木淑充。