清水建設/国学院大学の神殿が竣工、伝統工法駆使し本殿新材使用比率は3%

2025年5月21日 企業・経営 [3面]

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 清水建設が東京都渋谷区の国学院大学渋谷キャンパスで設計・施工した神殿が4月25日に竣工した。2023年に迎えた同大学創立140周年記念事業の一環として、キャンパス内の神域に明治神宮から譲り受けた御仮殿を改装、装飾して新たな本殿を造営。伝統的な木造建築の技術を駆使し、新材使用を最小限にとどめ耐震性も確保した。
 23年10月に着工した。神殿の構造と規模はW・基礎RC造平屋105平方メートル。明治神宮から譲り受けた御仮殿の解体材など本殿に極力使用した木材の総量は80立方メートルで、新材使用比率は約3%にとどまる。
 本殿の耐震性能を高める工夫も各所に凝らしている。柱と横材である長押(なげし)との拘束は、伝統的な仕口と和釘(くぎ)によりひずみ力に対抗。柱と貫(梁)で構成する構造体が地震によって変形しないよう、柱の間に配置した板壁と貫(梁)の間に「ダボ」と呼ばれる木片をかませ、両材のゆがみを防止している。
 本殿造替工事に合わせて拝殿や幣殿、神饌(しんせん)所、鳥居も解体移築した。このうち拝殿や幣殿、神饌所には屋根まわりの木材を中心に新材を調達・加工し、腐朽して使用できなかった部位は補修して再利用。屋根銅板は葺(ふ)き替えで温度伸縮による不具合が発生しないよう伸縮可能な目地を採用し、鳥居も柱を交換しただけで新材の使用は抑制した。こうした取り組みで拝殿や幣殿、神饌所、鳥居に使用した木材総使用量31立方メートルの新材比率は約30%だった。
 同社の米川智博工事長は、「一番大きなテーマとして御仮殿が非常に大きな建物だったので、(敷地)に最初入るのか配置決めの過程に手間がかかった。金物で安易に耐震補強するのではなく、見た目が分からないようにすることがうまくできた」と振り返った。