土木学会(佐々木葉会長)は、2025年度を初年度とする新しい5カ年計画「JSCE2025」を策定した。「組織の在り方」を軸に、バックキャストとフォアキャストの両観点から学会が目指すべき方向性や活動を提示。活力のあるコミュニティーとして存在し続ける組織体制や運営の在り方を示した。具体的な取り組みは新計画に基づき検討し、組織改革を踏まえたアクションプランをまとめ、26年度から実行する。
29日に東京都内で会見した佐々木会長は、学会の課題を「会員間の部門を横断する情報共有や支部・部門・業種間の交流が難しく、学会活動の知見が蓄積できていない」と分析。学会の計画は過去20年間、組織に対する言及がなく、「必要な情報にアクセスができなという学会内部の課題がある。会員が主体的に活動し自らの技術力、サービス提供力を向上させる場となるような機能が必要だ」と新計画の背景を説明した。
土木学会がこれまで策定してきたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を再整理し、バリューを中心に検討する。計画期間中に▽学術・技術の発展につなげる分野横断・連携の一層の推進と支援▽学会活動の知見の蓄積、流通と活用方策の検討▽学会活動におけるDEI(多様性、公平性、包括性)の促進▽体系的な技術者教育・土木教育の推進とアウトリーチ▽地方組織の活性化と相互交流の推進、本部・支部の連携促進▽学会活動と多くの会員との関係改善-の六つを議論。学会内の活動のアーカイブ化や、他分野も含めた新技術・情報などのプラットフォーム化の推進も検討する。
次期5カ年計画「JSCE2030」の議論も並行して進める。土木学会は現在、SDGs(持続可能な開発目標)に十分対応できていないと分析。学会が分野横断で土木と社会の発展に貢献できるか、「Beyond GDP」やSWGs(持続可能なウェルビーイング)に土木がどう貢献できるかといった視点で議論する。