埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて国土交通省が設置した有識者会議「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)が第2次提言をまとめた。家田委員長が28日、東京・霞が関の国交省を訪れ、中野洋昌国交相に提言書を手渡した。家田委員長は「(管路点検などの)技術だけの問題ではない。国民に理解、協力してもらい前に進めるのが肝だ」と訴え、中野国交相に先頭に立った対応を求めた。
提言のタイトルは「国民とともに守る基礎インフラ上下水道のあり方~安全性確保を最優先する管路マネジメントの実現に向けて」。事故を踏まえた点検調査を「管路の損傷しやすさ(ハザード)」と「事故発生時の社会的影響の大きさ」の二つの観点からメリハリを付けて行う必要性を指摘。多重化や分散化、DXなど今後の下水道管路の在り方も示した。
家田委員長は、提言に込めたメッセージとして「上下水道は利便性だけのインフラと思われがちだが、基本的に安全性の確保が根本になければならない」と強調。点検作業時の安全確保も含めて「厳しい財政事情の中でも、安全は絶対におろそかにしてはいけない。でなければ問題を先送りするだけだ」と注意喚起した。従来の事故と異なり「目に見えない」インフラの課題が表面化したとして「インフラマネジメントの第2ステージに入らなければならないと痛感した」とも述べた。
中野国交相は「提言をしっかり受け止めて全力で対応していく」と応じた。国土強靱化実施中期計画の取りまとめにも反映させるとともに、安全性確保が最優先との認識を広く社会に浸透させていく考えも示した。