バケットを自在に回転したり傾けたりできる「チルトローテーター」機能を持つ建設機械が、施工効率化と燃料消費量削減に効果を発揮することが国土交通省の比較検証で分かった。切削面に正対せず細部まで刃先が届くのがチルトの大きな特徴。特に効果が大きい小規模工事を想定した検証で、従来施工と比較し建機の稼働時間が半減し、燃料消費量も4割減った。国交省は建設現場の脱炭素化にも寄与する施工技術として普及を後押しする。
検証は都市部で行われる管路設置の床掘り施工を想定。集水ます(深さ1・2メートル)と埋設配管(約10メートル)の設置作業を従来施工と比較した。通常のバックホウは切削面に正対しなければならず細かな移動が必要になる。この移動時間と燃料消費をチルトは省けるため、従来施工より稼働時間を48・4%削減、燃料消費量を40・6%削減した。
チルトは丁張り付近や隅や角にも刃先が届くため、スコップを用いた人力作業をなくす効果もある。バケットをさまざまなアタッチメントに交換できるマルチツール機能を併せて備える場合が多く、使い方次第で人力作業の多くを建機に置き換えることも可能だ。
発祥のスウェーデンなど欧州では当たり前の技術だが、日本では世界的に見ても普及率が低い状況にある。国交省はICT建機を認定する既存制度の対象に「省人化建機」を1月追加し、チルトを新たな認定対象とした。認定要件として同一作業にかかる人工数の算出結果を示し、従来建機と比べて3割超の削減が可能という性能の担保を求める。4月には初弾として3社22型式を認定している。
中小企業庁の「中小企業省力化投資補助金」の活用で導入ハードルが下がる期待もある。同補助金ではカタログからロボットなどの製品を選ぶ簡易なプロセスで支援が受けられる。チルトも補助対象となる製品カテゴリーに登録済みだが、個別製品はカタログにまだ掲載されていない。製品登録が進めば、中小建設会社も小さいコスト負担で導入が可能となる。