国土交通省は改正建設業法で定める「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の方向性をまとめ、3日開いた中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)に提示した。これまで委員間で意見の相違が目立っていた労務費・賃金を支払う段階の「出口」の対策に手を加え、「コミットメント」制度などを具体化。第三者機関の設置を前提に、賃金支払いの確認システムを運用し優良企業を評価する方策について、官民の役割分担やコスト負担を引き続き検討したい意向を伝え、建設業団体などに前向きな議論を呼び掛けた。
同日の会合では、契約段階で労務費を確保する「入り口」の対策を含めた実効性確保の施策メニューやロードマップを提示。年内の法施行を見据えた中間整理とし、委員らに施策の方向性について理解を求めた。
コミットメントは法施行に合わせ、建設工事標準請負契約約款(標準約款)に選択的条項として追加する方針。請負契約で受注者が注文者に労務費・賃金支払いを約束し、情報開示に合意する。これまでの議論で元請の責任増大を懸念する声があったことから、下請からの賃金支払いの情報開示に賃金台帳を用いずに誓約書を提出する方法とする。下請への労務費支払いは、注文者に契約書の写しを提出することで開示する。
技能者本人が給与明細情報を入力し処遇への不満などを直接通報できるシステムの設計・構築を、国が中心となり2026年度に始める方針も示した。通報を端緒に雇用主を調査し行政指導に当たる流れ。第三者機関が管理主体となる方向も見据え検討する。
労務費・賃金の支払いで悪質な企業を国が公表する制度の構築に向け、社名公表などの法的根拠や公表基準の考え方を年度内に整理する。
以前の会合で国交省は賃金支払いの状況確認と適正化に取り組む建設業団体の自主的な活動を提案。これに「既存の業団体では対応に限界がある」との指摘があり、第三者機関の設置構想が持ち上がった経緯がある。第三者機関の活動を後押しするため、建設業者が任意で入力する簡易の賃金確認システムを構築。システムを通じ入力された賃金情報を基に第三者機関が優良企業に「処遇優良事業者証」を交付するアイデアを示す。だがシステム構築・運用のコスト負担を問題視する意見も根強くある。
3日の会合では国交省が、第三者機関の取り組み内容や賃金確認のシステム化に向けた役割分担やコスト負担を継続的な検討事項とすることを改めて提案した。業法改正で第三者機関に公的な権限を付与する必要性が生じることも念頭に、27年度中にも一定の結論を得たい考えだ。