政府は4日、2026年度から5年間を計画期間とする「第1次国土強靱化実施中期計画」案を公表した。特に推進が必要な114施策の事業規模を「今後の5年間でおおむね20兆円強程度」とし、当初予算とは別枠で確保する考えを示した。埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、3月に提示した素案から施策の一部を見直した。週内にも開く国土強靱化推進本部(本部長・石破茂首相)を経て閣議決定する。=2面に主な施策
同日、東京都内で開いた内閣官房の国土強靱化推進会議(議長・小林潔司京都大学名誉教授)=写真=に案を提示し、おおむね了承を得た。
案では114施策について、目標達成に要する事業規模のめどを示した。計画に定める5本柱の内訳は▽防災インフラの整備・管理=5・8兆円▽交通・通信・エネルギーなどライフライン強靱化=10・6兆円▽新技術の活用による国土強靱化施策の高度化=0・3兆円▽官民連携強化=1・8兆円▽地域防災力の強化=1・8兆円-とした。
毎年度の予算措置は災害発生や経済社会情勢を踏まえ「機動的・弾力的に対応する」と明記し、人件費や物価高騰には予算編成で「適切に反映する」とした。「計画初年度は、速やかに必要な措置を講ずる」としており、政府内には「補正予算を活用した前倒し計上」との見方もある。案には「財源確保方策の具体的な検討を開始する」と盛り込み、補正だけでなく当初予算への計上にも含みを持たせた。
「推進が特に必要となる施策」は、八潮市の道路陥没事故の対策検討委員会の提言を踏まえ、一部見直した。具体的な目標として損傷リスクが高く、事故時の影響が大きい大口径下水道管路は、全国特別重点調査の対象約5000キロの健全性を30年度までに100%確保するなどとした。このほか複線化・連絡管整備の完了率、リダンダンシー(冗長性)確保計画の策定率などの指標も加えた。
道路ネットワークの機能強化や道路施設の老朽化対策、住宅建築物の耐震化、国や都道府県管理河川の整備をはじめ流域治水対策などの推進も盛り込んだ。
同日の会合で坂井学防災担当相は、1年9カ月にわたる議論に謝意を示した上で「早期に(国土強靱化)実施中期計画を策定し、国民の生命、財産、暮らしを守るため、国土強靱化の取り組みを切れ目なく一層強化していく必要がある」と述べた。