建築へ/日建連が公共建築工事設計図書の適正化要望、発注機関との意見交換会

2025年6月6日 行政・団体 [10面]

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 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、国土交通省の各地方整備局など公共発注機関と行っている2025年度「公共工事の諸課題に関する意見交換会」のテーマに、「公共建築工事における設計図書の適正化」を盛り込んだ。設計図書に起因する問題がコストアップや工期に影響しているため、同省の「事例解説」などを活用し、適正化を促すよう求める考え。入札時積算数量書活用方式の適切な運用や地方自治体向けの対応なども要請している。
 □工期遅れ、品質に影響する「不備」確認/通知や事例解説運用し未然防止へ□
 意見交換会に臨むに当たって、日建連が会員企業に行った調査によると、国の発注工事に課題があることが分かった。23年11月以降に契約した請負金額10億円以上の工事について設計図書の不備に相当する事例の有無を調べたところ、66現場のうち半数を超える34現場から「そうした事例がある」という回答が寄せられた。
 確認された事例の発注機関別の内訳は▽国交省が4▽国交省以外が7▽都市再生機構などが1▽都道府県が7▽市町村などが15-だった。
 市町村は事例ありをなしが上回ったが、事例ありは2桁に達していた。個別の事例としては、図面の不整合が依然多い結果となっていた。調査結果に関しては、国交省官房官庁営繕部が過去に通知している措置が順守されていれば、「未然に防げるもの」という指摘や分析があった。
 官庁営繕部は、24年4月から建設業に適用された時間外労働の罰則付き上限規制に対応するとともに、生産性向上をさらに推進しようと、営繕事業の各段階で関係者の調整を円滑化するため発注者が行う事項を、23年3月に地方整備局などに通知。円滑化をさらに促進するため、今年3月に発注者が実施する事項の事例解説をまとめている。
 発注者が行う事項のうち、設計段階には「設計条件の明示」と「適切な設計図書の作成に向けた取り組み」を挙げてある。諸条件の整理や敷地・周辺状況の考慮、設計業務プロセスの管理、図面の整合性、施工条件の確認、指定する仮設の確認などに取り組み、適切な設計図書を作成し受発注者の生産性を高める。
 事例解説は、建設業団体に提供してもらった過去3年間の62事例の情報に基づき、改善するための具体例(改善点)を列挙した。
 設計条件の明示に関する改善点であれば、工事エリアの電気・ガス・上下水道を巡る行政協議や事前調整が抜け落ちず、進捗に合わせて発注者、設計者、施工者の間で必要事項をリストアップしておき、対応が遅れずに進んでいるか把握する。敷地や周辺の状況を関係者が共有し、必要に応じて敷地調査(測量、地盤調査など)を活用することも含む。
 日建連は、通知や事例解説の運用が進めば設計図書の不備が改善されると考え、国交省以外の国関係の発注機関への周知を要請。都道府県、市町村に対する周知とともに、普及状況の把握も要望していく。
 25年度の意見交換会では自治体に対し、国交省の営繕工事に導入している入札時積算数量書活用方式の採用を含めた営繕積算方式の運用を求めている。入札時積算数量書活用方式は工事請負契約の締結後に積算数量の疑義があった場合、入札時積算数量書に基づいた数量の協議を行う。
 営繕積算方式は、公共建築工事積算基準の運用に関する各種取り組みをパッケージ化した積算手法で、入札時積算数量書活用方式のほか最新単価の適用、積算条件の明示、物価スライドなどがひとくくりになっている。国交省は活用マニュアルを作成している。
 営繕積算方式の適切な運用は、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に定められている適正な予定価格の設定や、公共建築工事の円滑な施工の確保につながることから、日建連は同方式の適切な運用を要請していく。
 意見交換会は、5月12日から6月16日にかけて全国9地区で行われる。設計図書の不備は休日の数に直結する工程の遅延だけでなく、品質にも影響しかねない。意見交換会には国の発注機関とともに、自治体も多く参加している。日建連が用意した提案テーマとその説明資料を通じた設計図書の適正化を巡る発注者の動向が注目される。