大阪府は府外転出が続く企業立地の現状を踏まえ、府内への投資を促す「企業立地優遇制度」の見直しに着手した。制度創設から10年が経過し、社会情勢や産業構造の変化に対応するため、支援分野や対象地域の在り方を再検討する。18日に「2025年度第1回企業立地等投資促進審議会」を開催し、論点を整理。7月上旬の第2回会合で見直し案を提示する方針だ。
大阪府内では企業の転出超過が続いている。帝国データバンクの調査によれば、20~24年の5年間でみても府外転出数は毎年200社前後に上り、転入を上回る状態が常態化。24年時点で43年連続の転出超過となっており、企業流出に歯止めをかける施策が急務となっている。
制度見直しの背景には企業の設備投資ニーズの変化や府内産業用地の不足に加え、既存企業の維持・再投資への対応もある。府の試算では、府内にある工場施設の6割近く(3929件中2314件)が耐用年数を迎えており、老朽化による建て替えや更新のタイミングで府外へ転出するリスクも高まっているという。府は新規誘致だけでなく、既に立地している中小・中堅企業が府内で事業を継続できるよう支援を強化する考えだ。
18日の審議会ではAIやモビリティ、デジタル分野など新たな成長分野への対応、特定地域に限定されている支援区域の見直し、これまで対象外だった中堅企業の支援対象化などを論点として示した。対象制度は「成長特区税制」「府内投資促進補助金」「産業集積促進税制」。
10日の府議会本会議でも府議員から企業立地支援策の強化を求める意見が挙がった。対して馬場広由己商工労働部長は「他都市への転出超過が続いている。産業用地の不足や支援分野の限定、制度の対象地域・企業の柔軟性に課題がある」と述べた上で「府内企業の流出を抑制する支援が必要だ。有識者の意見も踏まえて制度を現状のニーズに即した形に見直す」との考えを示した。
府は見直し案の策定後、必要な条例改正と予算措置を行い、年内の議会提出、26年4月からの新制度運用を目指す。