「公共調達のデフレ構造をどう打ち破っていくかが大きな課題となる。明治以来の会計法、地方自治法による法制度の中でどう公共調達を適切なものとし、少しでもデフレにならないようにするか。そのための応用動作として運用されてきたのが品確法(公共工事品質確保促進法)だ。今回の改正でも、手がかりは入れたつもりだ」。
自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」の幹事長を務める佐藤信秋参院議員は、これまで3回の品確法改正に取り組んできた問題意識をこう語る。
現行の入札制度は標準的な積算で予定価格を設定し、それを上回る金額では落札できない。落札率を掛けた金額が次の標準となり予定価格を積算していく。この予定価格の上限拘束性に起因する弊害をできるだけ小さくするための方法を、品確法は改正のたびに提示してきたと言える。
土木学会の「公共工事の価格決定構造の転換に関する研究小委員会」の委員長などとして公共調達の制度改革の在り方を提言する木下誠也氏(社会基盤マネジメント研究所代表理事)は、日刊建設工業新聞社が企画した佐藤氏との対談で「上限拘束が撤廃できなければ引き上げ、併せて落札基準の見直しが必要だ。一番に価格が安いところと契約するのではなく、米国や英国のように発注者にとって最も有利な相手と契約するという落札基準に変えないといけない」と指摘する。
2024年6月の法改正で措置した、佐藤氏が言う「手がかり」とは何か。通常の積算では適正な予定価格の算定が難しい場合に、見積もりやその他の方法で積算を行うことを規定した「第7条第1項第3号」がその一つだ。もともとは災害時を想定した規定だったのを、今回の法改正で適用されるケースを災害に限定せず「災害その他の特別な事情」と範囲を広げた。災害後の復興係数や週休2日の補正係数など、個別の事情を考慮した積算の根拠となる。
12日の参院国土交通委員会で質問に立った佐藤氏は、この規定を念頭に政府の姿勢を確認。中野洋昌国交相は、施工の実態に即した歩掛かりや経費率の反映、必要な係数の設定による工事費の補正などにより「実態を反映した汎用(はんよう)性の高い積算による適正な予定価格の設定にしっかり取り組む」と答弁した。ここで概念的に表現された「汎用性」をどう追究していくかが、これからの公共調達を担う者の宿題となっていくだろう。
品確法の実効性ある運用とさらなる発展に向け、佐藤氏は「行政の中だけで変えていくのは難しい。(公共調達の例外事項を議員立法でつくってきた)背景や経緯も分かって政治の世界を応援してほしい」と訴える。今後のポイントに挙げるのは働き手の処遇改善と、しわ寄せがいかない環境整備だ。「働く人たちの幸せが第一であり、公共調達もそこから在り方を考えていかなくてはならない。これは今後も変わらない」。=おわり
(編集部・沼沢善一郎)