建築へ/関東整備局/長野第1地方合同庁舎A棟着工、新たな防災拠点刷新へ

2025年7月4日 工事・計画 [10面]

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 長野市中心部に新たな防災拠点を刷新--。国土交通省関東地方整備局は長野市内にある九つの官署を集約し、長野第1地方合同庁舎の敷地内に「長野第1地方合同庁舎(仮称)A棟」、「同B棟」と「同検察棟」の3棟を建て替える計画を推進。高低差のある敷地形状を活用したオープンスペースを設け、来庁者の利便性向上、人々の交流や活動が生まれる地域に開かれた場も生み出す。
 建設地は南長野宇上ノ原286の1の一部ほか(敷地面積約1万4947平方メートル)、都市計画法に基づく「一団地の官公庁施設」の指定を受ける。
 建物はA棟、B棟、検察棟を敷地南西部にL型配置し、既存庁舎を段階的に建て替えながら整備を行い、県庁通りを挟んで所在する長野第2地方合同庁舎ともに災害時には地域防災計画等に寄与する機能も併せ持つ。オープンスペースの整備を含めた外構計画については、今後関係者と協議を行い、詳細を確定する予定だ。
 A棟はRC造6階建て延べ5191平方メートル、信越総合通信局と長野地方気象台が入居する。B棟は延べ約6970平方メートル、検察棟はRC造4階建て延べ5128平方メートル規模を想定する。
 A棟の設計は東畑建築事務所、建築工事を安藤ハザマが担当。「さまざまな『つながり』を生み出す新たな合同庁舎」をコンセプトに設定し、1月に工事が始まった。2026年9月の完成を目指す。
 敷地は南東から北西に向かって全体で約8・5メートルの高低差がある。この段差を活用し、敷地内に必要な行政機能を確保しつつ、その他の付加価値を設けることを想定。今後、全体整備後は敷地内の通行を南東から北西へ往来できるようにすることなども検討中だ。
 長野市景観計画に基づいた形態、色彩とし、この地特有の扇状地の水平性を強調した外構デザインを建物にも取り入れた。各棟が個性を持ちながらも、敷地全体が一体的になるように設計した。
 建物の配置にもこだわった。建て替え後、施設の背後にそびえたつ標高785メートルの旭山が望めるようにA棟とB棟同士の間隔を最大限確保する。
 来庁者が目に付きやすいエントランスホールや外部の自転車置き場には、積極的に木材を活用する考え。木材が持つ温かみを感じられる施設を目指す。
 建物は東西の奥行きの深い間口に対し、適正な奥行きを持った執務空間を確保するため、階段やトイレを集約するセンターコアを採用。中央部に光庭、その周囲をロの字型の廊下を設け各執務室への採光と通風を確保できるようにする。
 現地では既存施設を使いながら段階的に各棟を建て替えている。「施工会社は施設利用者に配慮した仮設計画を立て、事故がないように慎重に工事を進めている」(関東整備局営繕部)。高低差がある敷地でもスペースを確保するため、作業構台などを設けて施工しやすい環境も整えている。
 関係者間のコミュニケーションを円滑にする取り組みとしてBIMも活用している。
 20年9月に開始した合同庁舎の設計業務ではBIMデータ納入を試行した。計画建物の他、地盤、周辺の建物や敷地のデータを作り、地盤改良深さや完成後に風の流れがどうなるのかなどを検証。BIMデータを用いたアニメーション作成やVR(仮想現実)による仮想空間体験により、関係者間の情報共有や合意形成に役立てた。現在、施工者が配管類の納まりを検討するのにも使用し、生産性向上につなげている。
 A棟完成後は検察棟とB棟の建設工事に着手する予定だ。検察棟も東畑建築事務所が設計を担当し、長野地方検察庁・区検察庁が入居する。
 B棟は合同庁舎に入居している▽長野行政監視行政相談センター▽東京出入国在留管理局長野出張所▽名古屋税関諏訪出張所長野地区政令派出所▽関東農政局長野県拠点▽信越自然環境事務所-が入る。法務総合庁舎に入居している長野保護観察所と長野公安調査事務所を含む計7官署が入居する。完成時期などは未定という。
 高い防災性能を持った庁舎は人々の交流や活動を生み出す機能も併せ持つ。工期厳守の下、現場では周辺への環境に気を配りながら、着々と工事が進む。