前田道路が大阪・関西万博でカーボンニュートラル(CN)に貢献する未来の舗装技術を発信している。二酸化炭素(CO2)を固定したコンクリート再生路盤材を紹介。展示スペースの一部に敷いたアスファルト舗装の材料に大気中のCO2を固定した合成炭酸カルシウム(合成石粉)を使っている。合成石粉にはアサヒ飲料の「CO2を食べる自動販売機」で回収したCO2を利用した。新しい舗装技術を国内外から訪れた来場者にPRし、早期の実装を目指す。
舗装技術を展示しているのは、大屋根リング外側の南東にある地球環境産業技術研究機構(RITE)の展示空間「RITE未来の森」の前田道路ブース。未来の森では、地球環境を守る最先端技術や未来の生活が体験できる。
前田道路技術研究所技術管理課の高橋知課長は「CNに貢献する未来の舗装技術になる可能性を秘めている」と話す。万博で実証中の舗装技術は、解体現場などで出たコンクリート廃材を破砕して作る再生路盤材に、合材工場の製造過程で排出したガスに含まれるCO2を吸収、固定している。道路舗装の表・基層部になるアスファルト混合物の材料には、万博会場の自動販売機で回収したCO2を利用した合成石粉を使用。CNに貢献する環境に優しい舗装はブースのガイダンスホールや屋内通路に敷設した。
前田道路のブースは一般来場者の徒歩での立ち入りが禁止された管理エリア内にあり、見学ツアーの参加は予約制になっている。ツアーは1回1時間程度で1日6回(各回定員20人)実施。国内外から来訪した一般の人や業界関係者らで連日にぎわっている。ガイド担当者がコンクリート破砕材の入ったペットボトルにCO2を注入する実験も実施。粉砕コンクリートがあっという間にCO2を吸収し、ペットボトルがつぶれる様子に驚く来場者も多いそうだ。
前田道路とアサヒ飲料は、2023年8月に合成石粉を使用したアスファルト舗装材の共同開発を始めた。24年3月に物理性能規格の適合を確認し室内検証を完了。続いてアサヒ飲料施設内での試験施工、前田道路の合材工場や施工現場で検証を通じ、製造や施工の方法だけでなく品質も通常の舗装と同等と確認した。舗装材の持続可能性という観点から、限られた資源である石粉の使用量を削減する効果もある。
25年1月には茨城県土浦市の市道で試験運用を開始した。10~15年程度にわたる長期間の路面調査で耐久性能などを検証する。CO2を吸収、固定した再生路盤材を全国の道路に採用すると、前田道路はCO2の固定量が2120万トンに達すると試算する。高橋氏は万博でのPRや土浦市での実証などを通じ、合成石粉を使ったアスファルト混合物やCNを推進する舗装技術が「国内だけでなく世界に広められる技術」と胸を張る。道路舗装業界で技術の確立に先鞭(せんべん)をつけ「早期の実装を目指したい」と意気込む。