「自信は成功の第一の秘訣(ひけつ)である」。米国の思想家で作家や詩人としても知られるラルフ・ワルド・エマーソン(1803~1882年)の言葉は、福沢諭吉や宮澤賢治も大きな影響を受けた▼仕事と向かうとき、己の力を信じる自信はエンジンになる。だが自信が「もう十分だ」という慢心に変わった瞬間に歯車は狂う。将棋の羽生善治九段も「慢心は弱さの一種」と警鐘を鳴らす。慢心は学びを止め、視野を狭め、成長の芽を摘む▼ではどうすればいいか。「私が一番知っているのは、自分がまだまだ知らないということだ」(松下幸之助)。自信という帆を広げながら、謙虚といういかりを海底に下ろす。いかりがあるから帆は嵐でも傾きが修正できる。自信は背中を押す風、謙虚さは足元を照らす灯火だ▼風が強過ぎれば足が浮き、灯火が消えれば闇に迷う。均衡を取る知恵は経験から生まれる。失敗を恐れず一歩踏み出し成功に酔わず一歩退く。リズムを刻むことで安定した航路が描けるようになる▼自信と慢心、謙虚の三つを循環させ常に挑戦者であり続ける構えこそが、明日を切り開く鍵になると信じる。