大成建設は、オフィスなどのS造建築物の床振動を効果的に抑制するシステムとして「T-Silent TMD Floor」を開発した。制振装置の「TMD」(チューンド・マス・ダンパー)を低コストで施工性に優れた薄型、円形にして採用。既存建築物では家具の移動などを最小限に抑え短工期で導入できる。2022年に開発したAIを用いてTMDの仕様や配置の最適設計を可能とする解析技術「T-Optimus TMD」と組み合わせることにより、導入コストを従来比で最大50%削減する。
TMDの構造を薄型、円形にし、オフィスの床下にも設置可能なコンパクトな新型TMDを開発。従来に比べ低コストで製造でき、標準的なOAフロアパネル(500ミリ×500ミリ)1枚分のスペースに収まるため施工やメンテナンスも容易に行える。さらにAI解析技術と組み合わせることでTMDの仕様と配置を最適化。新たに導入コストを大幅に抑える床振動抑制システムを完成させた。
新型TMDは、コンパクトな直径420ミリの円形錘を板ばね3本で支持する簡易構造を採用。高い支持安定性と自由度のある設計が可能となり、従来品より製造コストを約20%削減できる。錘を重くでき設置台数を減らしても十分な振動抑制効果が得られる。既存オフィスでも家具や什器の移動を最小限に抑え短工期で設置可能。薄型のためOAフロアと床スラブ間の床高が低い場合にも柔軟に設置できる。
AI解析技術と組み合わせることにより、錘の重量やばね特性、配置を最適化する。従来の設計方法では床振動の抑制にTMDが10台必要だったが、新システムではTMD6台で同等の効果が得られることを実際の建物を用いた検証で確認している。
オフィスなどの一般的なS造建築物では、歩行などによる床振動が執務空間の快適さや作業効率を妨げるケースがあった。今後は新築、既存双方の建築物を対象に、新システムを高性能、低コストで容易に設置できる効果的な床振動対策として積極提案していく。