横浜国立大学や鹿島らは9日、遺伝子組み換え植物を利用した有用物質の生産を目指す新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトの一環で、「植物バイオものづくり研究開発拠点」を同大学内に設置した。有用物質の生産用に開発した植物の栽培から遺伝子発現、目的物質の抽出、精製までを一貫して実施できる世界初の施設になる。技術情報も発信し、人材育成や産学連携を後押しする。
NEDOが採択した「遺伝子組換え植物を利用した大規模有用物質生産システムの実証開発」の一環として設置した。横国大と鹿島、産業技術総合研究所(産総研)、デンカ、東京大学大学院農学生命科学研究科、北海道大学の6者が共同で進めている。
有用タンパク質はワクチンや診断薬といった医薬品の原料として使用される。現状は多くが微生物や動物細胞をもとに生産されているが、植物からも生成できる。病原体や毒素の混入リスクが低く、生産コストや初期設備投資も低く抑えられるメリットがあり、世界的に研究が進んでいる。
研究開発拠点は、横浜市保土ケ谷区にある横国大常盤台キャンパス内に設置した。宿主となる植物の育種から栽培、生成物の分離、精製までを一貫して実施する。植物バイオ技術の講習や実地研修、セミナーといった教育活動にも活用し、人材育成につなげる。
鹿島は植物の破砕・抽出を行う装置を拠点内に設置した。植物体内で発現した目的タンパク質を短時間で高効率に取り出せる抽出システムを生かす。ビジネスマッチングの場として活用していく方針で、同社担当者は「まずは取り組みを知ってもらい、ともにビジネスを育て上げていきたい」と話した。
9日に現地で開設式を開いた。横国大の梅原出学長は「地球規模で進む環境問題に対応するため、研究活動を進めている。拠点を通じて、未来を切り開く研究者を育てていきたい」とあいさつした。NEDOの林成和理事は「植物バイオのものづくりが社会実装という形で花を開き、低炭素社会と健康豊かな生活という形で実を結ぶことを祈っている」と述べた。