「和の武道」といわれる合気道の達人・塩田剛三(1915~94年)は身長154センチ、体重46キロと小柄な体格ながら厳しい鍛錬で心と体を練り上げ、生ける伝説ともうたわれる存在になった▼17日は不世出の合気道家の命日。合気道は誰でも親しめる護身術として人気が高く、世界に多くの道場がある▼他人と優劣を競わず、互いを尊重する姿勢を貫き、ひたすら稽古に打ち込む。塩田が合気道の修行でたどり着いたのが「対すれば相和す」の理念。弟子から「合気道で一番強い技は何か」と聞かれた時に「自分を殺しに来た相手と友達になることだ」と返した▼力のもみ合いはしない、押されても押し返さない。引っぱられても引っぱり返さない。文字通り「相手と気を合わせる武道」の基本にいつでも立ち返り、素直な心を持つことが調和と自信を育むと説いた▼先日、米トランプ大統領が8月から日本に25%の関税を課すと表明し、石破茂首相は「なめられてたまるか」と応戦したと聞く。はっきりともの申す姿勢はもちろん大切だが、言葉の選択として正しかったのか--。「和合の道」は難解な外交にも通じる部分がある。