建築へ/建築ロボット普及拡大へ、日建連専門部会が新たな指針

2025年7月18日 論説・コラム [16面]

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 ◇現場への導入手順、安全管理の在り方整理
 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が建築現場でのロボット導入を後押ししている。建築技術開発委員会技術研究部会建築ロボット専門部会が安全指針を新たに作成し、導入に向けたガイドラインを改定した。施工現場へのロボット導入を円滑に進める手順や、安全に運用する考え方を整理した。建築ロボットを導入したいと考えている企業や担当者がガイドラインと安全指針を参照し、ロボット活用に必要な計画・準備・管理・検証に役立ててもらう。
 建設業界は近年、技能者の高齢化、新規入職者の減少などによる労働者不足に対応するため、生産性向上に向けたさまざまな取り組みを実践している。その一つに建設工事のロボット導入があるが、導入事例や安全対策など実際に現場で使用するために必要な情報が少ない。企業側もどこから手を付けていいのか分からないのが実情だ。
 建築ロボットの社会実装には、現場で安全に活用するためのルール形成や標準化が必要となる。そこで日建連は「建築現場におけるロボット導入ガイドライン」を改定し、新たに「建築現場におけるロボット活用の安全指針」を策定した。
 同ガイドラインは建設現場でロボット導入の敷居を低くし、ロボットの普及拡大につなげることを目的に2024年に作成した。建築ロボットの現場導入を検討、計画、準備、実施する時に加え、導入後の効果検証で参考となる情報を、各種ロボットの導入事例を基に整理している。
 対象のロボットは▽搬送▽遠隔操縦▽床仕上げ▽ひび割れ検査▽清掃▽鉄筋結束▽コンクリート打設▽墨出し▽遠隔監視▽多能工作業-の10種類。これらの開発者や導入担当者、レンタル会社などにヒアリングし、環境整備の方法や運用体制、望ましい安全管理の在り方、導入効果などをまとめた。
 今回の第2版では、ロボットの種類別に導入効果の向上が期待できる作業条件や導入による波及効果、従来作業と比較した導入効果の試算結果などを追加した。建築ロボットに関連する法令やガイドライン、導入支援制度などの情報も更新している。
 同安全指針は建築ロボットの導入後の事故や災害を防止するため、一般的な安全対策、責任の所在を示した。開発段階の建築ロボットへの適用も推奨している。基本的に元請となる工事管理者を主体に、建築ロボットに関わる製造者や使用者も指針を活用し、導入に向けた工事計画の立案時に安全対策、品質確保、生産性向上の検討で参照する内容として位置付けた。
 建築ロボットを現場で安全に活用するため、▽実施すべきリスクアセスメントの手順▽ロボットの機種や能力の決定▽危険度によるロボットのクラス分け▽リスク低減の対策▽現場導入に際しての安全管理▽教育・訓練に関する留意事項-などを挙げた。
 建築ロボットにはさまざまな仕様がある。重量や速度、高さ・重心、火気使用の有無などに応じクラス分けした上で、それぞれ十分な対策を講じることが重要となる。導入するロボットの安全対策は「製品化されたロボット」「開発段階のロボット」で分け、使用者ごとの基本的な安全対策を盛り込んだ。
 リスクアセスメントについても明記。機械類の安全性に関する国際規格「ISO12100」などの規格や基準に準拠したロボットの導入時のリスクアセスメント手順を紹介している。対象機種の仕様や性能などに基づき、ロボットが持つ潜在的なリスクの大きさでクラス分けし、結果に応じて導入までの検討フローを設定している。
 現場ごとの多様な状況に応じた柔軟な対応を推奨。実際のロボット事例やリスク評価シートも収録し、現場導入の担当者が実務的に参考にできる構成となっている。
 ロボットの導入は開発コストや安全性への懸念など課題も少なくない。だが長期的には現場の負担軽減や品質向上につながる。建設業の生産性革命を実現する一助として、現場でロボットを活用する場面が今後ますます増える。日建連のガイドラインや安全指針が、建設現場の未来を切り開く礎となるだろう。

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