回転窓/受け継がれる祝祭の息吹

2025年9月19日 論説・コラム [1面]

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 大阪・関西万博の閉幕まで、残り1カ月を切った。10月13日を前に駆け込みの来場も増え、会場は連日多く家族連れや観光客でにぎわう▼世界最大の木造建築「大屋根リング」の下は、日差しを和らげ、風が通う安らぎの場。柱に描かれたアートを探したり、腰を下ろして見上げたりすれば、木のぬくもりと光が溶け合い、時の流れまで穏やかに感じられる▼リングの内外には見どころが尽きない。著名建築家やデザイナーのパビリオンに加え、若手が設計した休憩所やトイレまで並び、歩くたび新しい発見がある。壮大な建物から小さな施設まで、多彩な感性が響き合う姿は建築の祝祭といえる▼会期が終われば原則は解体と撤去。だが廃棄を減らそうと、日本国際博覧会協会が開設したマッチングサイトには、テーマ館の部材や建材、設備が100件以上出品され、次の担い手を募っている。建材が再びどこかで息づくと考えれば、建築の命の循環に気付かされる▼環境への配慮や持続可能な社会の実現は今回の大切な柱。パビリオンが無に帰すことなく、各地で新たな役割を担い、息吹が静かに受け継がれることを願いたい。

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