回転窓/隅をつついて、器を問われる

2025年8月5日 論説・コラム [1面]

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 仕事をする上で細部に目を配ることは大切な姿勢だ。「神は細部に宿る」という言葉があるように、細やかな心配りは組織の活性化にもつながる。ただ、こだわりが度を超すと、かえって前進の足を引っ張ってしまうこともある▼皮肉なようだが、「よく見ている」人が、必ずしも「よく見えている」とは限らない。小さなミスに気づける人ほど、全体の方向性を見落としてしまうことがある。「木を見て森を見ず」とはまさに、このことだろう▼「リーダーとは、希望を配る人である」とはナポレオンの言葉。けれども実際には「指摘を配る人」として日々を過ごしている自分に、ふと気づくことがある。誤りを正すことと、人を育てることは、似ているようでいて本質は異なる。完璧を求め過ぎる姿勢が、知らぬ間に周囲の意欲を奪っていることもある▼責任とは「誰かを正す勇気」ではなく、「何があっても受け止める覚悟」の中にある。信じて任せるには、覚悟と度量がいる。だからこそ、そこに人は信頼を寄せるのだろう▼重箱の隅をつつく前に、「細部へのまなざしは美徳」という原点を胸に刻み、自分を見つめ直したい。