9月に両国国技館で開かれた大相撲秋場所は、千秋楽まで優勝争いがもつれた。同じ勝ち星で並んだ横綱同士が優勝決定戦に臨み、昇進2場所目の大の里が通算5度目、横綱として初の賜杯を抱いた▼横綱同士が賜杯を争うのは16年ぶり。東西の横綱が場所を引き締め、熱戦に心を奪われた人も多かっただろう。今や相撲は武道やスポーツとして海外にも広がる。相手より先に「土俵の外に出る」か「足の裏以外が地に付く」と負けるという明快な勝敗の理も、受け入れられる理由の一つだろう▼大相撲の熱が海を渡り、ロンドン公演がロイヤル・アルバート・ホールで15日(日本時間16日)に初日を迎えた。幕内力士が取組を披露し、5日間の成績で優勝が決まる。稽古の公開や子ども向けの体験イベントも予定されている▼海外公演は相手国の招待で開催し、ロンドンは1991年以来2度目。これぞ大相撲という取組を英国の観客に存分に見てもらいたい▼1871年に開館した劇場に土俵を築き、つり屋根を備える。日本の伝統と力士の気迫が異国の空間でどのように響くのか--文化を超えた共感の輪が広がることを願う。