大成建設ら/3次元長周期地震動シミュレーション基盤開発/より詳しい安全検証可能に

2025年8月21日 技術・商品 [3面]

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 大成建設らが海溝型巨大地震で想定されるさまざまな地震発生ケースを網羅的に解析できる「3次元長周期地震動シミュレーション基盤」を開発した。震源モデルを自動生成し、スーパーコンピューター「富岳」を使って複雑な長周期地震動を短時間で3D解析。建物の耐震安全性能をより詳細に検証し、損傷リスクを評価する。自社設計の超高層建物に活用するとともに、顧客の要望に応じ受託解析なども行う予定だ。
 文部科学省「『富岳』成果創出加速プログラム」の一環で、同社、東京大学地震研究所、海洋研究開発機構(海洋機構)の3者で共同開発した。
 同社は富岳の活用を前提に、想定される多様な地震発生ケースごとに震源モデルを自動生成するプログラムを独自開発した。東大地震研が開発し、海洋機構が改良を加えた3D有限要素法の計算コード「E-wave FEM」を用いて地震動を計算。長周期地震動を短時間で高精度に把握できるシミュレーション基盤を富岳に構築した。
 同社開発の震源モデル作成プログラムは、過去のさまざまな地震の特徴量(機械学習モデルに入力するデータの特徴を表す数値や情報)に基づき、数百から数千までの震源モデルを数秒で自動的に生成。これによりモデル作成の時間を大幅に短縮し、広範囲にわたるさまざまな地震動の発生ケースを網羅的に解析できる。
 富岳を活用するとともに、3D有限要素法の計算コードを用いて短時間で長周期地震動を解析。その影響を正確に予測する。さまざまな地震発生ケースで数値解析し得られた地震動データを統計的に処理し、平均的な揺れや最大級の揺れの大きさを把握。より詳しく建物の耐震安全性能が検証でき、損傷リスクを評価する。
 国土交通省は、同社が設計した超高層建築物で生成した震源モデル、計算された長周期地震動の妥当性を審査し、建築基準法に基づき大臣認定している。