長谷工コーポレーションは、石積み擁壁を復元する新工法を開発した。石材の一つ一つを組み直し、擁壁自体の重さを利用して土の圧力を抑える「重力式石積擁壁」として復元。擁壁の安全性を高めつつ周辺の景観も保全する。長谷工不動産と東京建物が鹿児島市上町エリアにある越前島津家の武家屋敷跡地に建設しているマンション「ブランシエラ南洲門前」の現場に、国内で初めて採用した。
マンションを建設している鹿児島市の上町エリアは古い街並みが残り、市が景観条例に基づいて石垣を保全している。当初は跡地にある1600個(重量1個当たり200キロ)の石積み擁壁を残したままマンションを建設する計画だった。だが都市計画法の安全基準に満たないことが判明し、新工法で擁壁を組み直すことにした。
重力式石積擁壁の施工では、1600個の石材全てに番号を付与。記録画像を撮影してから擁壁を解体した。ばらばらにした石材を組み直して新しい擁壁を構成。擁壁背面に打ち込むアンカーボルトの一部を石材、残りの部分を石材背面のコンクリート擁壁に埋設し、安全性を高めた。
新工法は、2016年の熊本地震で崩落した熊本城の石垣修復などに携わった中村石材工業(大阪市港区、西川友子社長)と共同で特許を出願している。